科目名[英文名]
機械材料学   [Materials Science and Engineering]
区分 工学部専門科目等  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 14  開講時期 後学期 
授業形態 後学期  時間割番号 021531
責任教員 [ローマ字表記]
高橋 徹, 山中 晃徳   [TAKAHASHI Tohru, YAMANAKA Akinori]
所属 工学部 研究室 小金井6号館304室  メールアドレス

概要
機械材料学では機械材料にとって最も重要な機能である「強さ」を軸に講義を進める。機械材料の力学的な「強さ」には大きく3つの側面がある。材料に外からの力が加わった時に生じる弾性的なのび・たわみに対する抵抗は「剛性(stiffness)」と呼ばれる。力が取り除かれた後に残る永久変形に対する抵抗は「降伏強さ(yield stress)」によって表される。力が加わった時に材料が破壊しないためには高い「靭性(toughness)」が要求される。この他にも、材料に加わる力の時間に伴う変動、温度・環境・雰囲気が材料の強さ・劣化・寿命に大きな影響を及ぼす。そのような条件のもとで使用される時に所定の「強さ」を発揮することが機械材料の果たすべき役割となる。本科目では各種工業用材料(金属と合金、セラミックス、ポリマー、ならびに、複合材料)の性質・特徴・適用性と材料選択について概観することを目的とする。
到達基準
1)機械材料として用いられる4タイプの物質を列挙し、それぞれにおける原子・イオン・分子からなる内部構造と結合様式を説明できるようになること
2)材料科学と材料工学の両面から材料をとらえられるようになり、物質の構造と性質を材料の性能に結び付けるプロセスについてミクロの観点から理解し説明できるようになること
3)構造材料に力・応力が作用する時の材料応答(弾性変形・塑性変形・破壊)について、それそれぞれを最も端的に表す材料定数と数値・単位もあげて説明できるようになること
4)外的な力から材料に作用する応力についてな観点から分類して説明できるようになること
5)構造材料における応力とひずみの関係について図式的に示し、その図式の上で示される材料の強さに関する材料定数を指摘できるようになること
6)塑性変形の微視的メカニズムと各種の強化機構について説明できること
7)脆性破壊と延性破壊について、それぞれのメカニズムと特徴について説明できること
8)疲労(低サイクル疲労ならびに高サイクル疲労)とはどのような現象かについて説明できること
9)剛性・塑性・破壊の観点から、安全設計ならびに軽量化のための材料選択について必要となる材料学的尺度を探索できること
授業内容
第1回【材料と人間】人間の文明において材料が果たした役割を踏まえ、科学技術とともに急速に発達してきた各種工業材料の開発の歴史について概観する。さらに、地上で利用できる資源の有限性と素材のコストにも注目する。
第2回【材料と適用性】材料の適用性を決定づける「材料の性質」、性質の起源である「構造と物性」、材料の性質を高めるための「プロセス」とは何かという観点から俯瞰する。
第3回【材料の大分類】材料として利用される様々な人工的物質をセラミックス、金属、ポリマー、コンポジットに大分類し、原子、イオン、分子の間に作用する結合力について説明する。
第4回【材料物性の支配要因】材料が示す密度、弾性率、熱膨張率などの性質が原子・イオン・分子の間に作用する結合力と結合エネルギーに支配されていることを理解する。
第5・6回【金属の機械的性質(1)弾性】公称応力・公称ひずみ・真応力・真ひずみの定義、フックの法則、ヤング率、ポアソン比、剛性率について説明できるようにする。また、弾性たわみに関するケーススタディーから、弾性設計における材料選択の原理について考察する。
第7回【結晶固体の成り立ち】原子・イオン・分子が空間的に整列した結晶とその幾何学について説明する。面心立方晶、体心立方晶、最密六方晶の結晶構造について、単位胞の模式図の作図、格子定数と原子半径の関係式の導出、原子充填率の、密度の導出などができるようにする。
第8回【結晶固体における方向と面】結晶における方向と面を記述するミラー指数とその記号について説明する。いくつかの低指数の方向・面について作図できるようにする。
第9回【金属の機械的性質(2)降伏と塑性】金属系材料などの結晶固体における応力-ひずみ線図の典型例から、弾性率・降伏強さ(耐力)・引張強さ・加工硬化率・のびを読み取ることができるようにする。
第10回【塑性変形と転位モデル】塑性変形と強度の支配機構において重要な転位モデルを紹介し、転位が応力下で運動すること、転位の運動に対する障害物の導入によって強度が高まることについて説明できるようにする。
第11回【金属の機械的性質(3)破壊と靭性】材料中の微視割れの成長のエネルギー論に基づいた破壊力学の考えを導入する。延性材料の変形から破壊に至る過程を理解し、均一変形・局所変形・断面減少率・破面形態・安全係数・安全応力について説明できるようにする。
第12回【材料試験法】硬さ試験・引張試験・衝撃試験・疲労試験・摩耗試験・クリープ試験・破壊靭性試験・腐食試験などについて幅広く理解する。
第13回【疲労】繰返し応力サイクルにさらされる構造材料の破壊につながる疲労現象について説明できるようにする。高サイクル疲労・低サイクル疲労の現象論を記述するバスキン則・マンソン=コフィン則、疲労限などを理解する。
第14回【クリープ】長時間・長期間にわたって応力が加わる材料の耐熱強度を支配するクリープのあらましについて説明する。
第15回【総括と機械材料工学Ⅰへの誘導】機械材料学の内容を振り返り総括するとともに、2年次後学期に開講の機械材料工学Ⅰの学習内容について紹介する。
履修条件・関連項目
数学ならびに物理学の基礎的素養を必要とする。2年次開講の機械材料工学Ⅰの基礎となる。
テキスト・教科書
教科書として材料工学入門-正しい材料選択のために-(堀内・金子・大塚 共訳、内田老鶴圃)を使用する。
参考書
特に指定するものはない。
成績評価の方法
毎回の講義で小設問を出す。学期内に数回のレポート課題を提出させる。成績評価は前半担当者と後半担当者がそれぞれ実施する試験の評点の合算に基づいて行う。学期末の定期試験の採点においては、正答ならびに正しい記述について加点する。
教員から一言
毎回の講義で小設問カードにより出欠をとる。講義内容ならびにレポート課題についての質問にはオフィスアワーの時間帯を積極的に活用されたい。配布資料はファイル保管の上、大いに利用してもらいたい。
キーワード
材料科学と材料工学、金属・セラミックス・ポリマー・複合材料、構造材料と機能材料、剛性・降伏強さ・靭性、材料選択
オフィスアワー
昼休みの時間か4限終了後の時間帯を利用して下さい。 場所:6号館405室か6号館304室に来て下さい。そのときの都合により場所を決めます。
備考1
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
英語
更新日付
2017/03/22 9:36:15