科目名[英文名]
無機化学Ⅱ   [Inorganic Chemistry Ⅱ]
区分 工学部専門科目等  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 24  開講時期 前学期 
授業形態 前学期  時間割番号 022207
責任教員 [ローマ字表記]
齋藤 守弘   [SAITO Morihiro]
所属 工学部 研究室   メールアドレス

概要
無機化学は非常に膨大な分野を包含しているため、一般に各論的になりがちであり、体系的に理解しにくいと考えられるが、本講義では、無機化学をできるだけ体系的に理解するために、全元素の化学という立場に立ちながら、無機化学Ⅰに引き続いて、無機化合物の合成、構造、物理および化学的性質を系統的に理解することを目的とする。特に、化学結合に関する高校までの便宜的な知識から脱却し、量子化学に基づいた正しい理解を習得する。配位化合物の結合、立体構造、電子状態などについて結晶場理論、原子価結合法、配位子場理論に基づいて解説し、d軌道を含んだ化学結合の概念を理解する。また、無機物質も分子・原子の概念で統一的に理解するための基礎、配位化合物の命名法の原則、配位化合物の基礎的反応として配位子交換反応などについても学習する。
到達基準
(1) 化学結合について量子化学に基づいた正しい理解ができる。
(2) 配位化合物の結合、立体構造、電子状態、化学的性質などについて、結晶場理論、原子価結合法、配位子場理論の観点から説明できる。
(3) 正しい原則にしたがって、配位化合物の命名ができる。
(4) 配位化合物の反応について、正しく理解し説明できる。
授業内容
無機化学は、有機物質の化学に比べて元素の種類や地球上での量も圧倒的に多く、そのためその構造や反応性は多様性に富んでいる。無機物質は、鉱物、磁性体、金属製品、酸、アルカリなどはもちろん、ニューマテリアル、有機合成、触媒、金属酵素やミネラル、生命化学、医薬品など多方面の分野で取り扱われる。これらは、あまりにも多岐にわたっているため、統括的に理解するのは困難であることから、従来、無機化学の多くは元素別の各論として取り扱われてきた。そのため、無機化学は暗記物のように取られていた面があったが、量子化学や化学結合の概念や、溶液中で取り扱うことのできる金属錯体の構造が明らかにされるに従って、無機化合物といえども分子レベルで理解することができるようになってきた。本講義では、無機化合物の構造、電子状態、反応性などを系統的に理解することを目的としている。そのため、元素別の各論については、重要ではあるもののあまり触れないので、各人が教科書を熟読して理解するようにしておいていただきたい。また、無機化学Ⅰで学んだ基礎的事項は充分理解しておいていただきたい。以下に講義内容を記す。

第1回:無機化学Ⅰで学んだ化学結合に関する小テスト
第2回:ビデオ教材(英語及び日本語)を用いた化学結合に関する視覚的かつ正確な理解。σ結合とπ結合、結合性軌道、反結合性軌道、非結合性軌道と化学結合など。
第3回:無機化学のルネッサンス。種々の色を持つ一連の(アンミン)コバルト錯体の構造の不思議を解決した若きウェルナーの化学論争を契機として無機物質が分子レベルで理解できるようになった歴史的な話から講義を始める。
第4回:八面体錯体の結晶場理論。結合の数と酸化数の違い。原子価結合法。
第5回:6配位化合物の立体構造と異性体(立体異性体や光学異性体)。結合異性、配位異性など。
第6回:正八面体錯体の電子構造:高スピン錯体と低スピン錯体。ヤーンテラー効果
第7回:配位子場理論:金属錯体の分子軌道理論による理解。
第8回:中間理解度確認
第9回:配位子置換反応、トランス効果、トランス影響
第10回:単核錯体の18電子則。金属錯体の安定性。
第11回:平面四角形型錯体、多核錯体
第12回:配位化合物の命名法。
第13回:π受容性の配位子(一酸化炭素、エチレン)、逆結合、欠電子結合
第14回:生体内における遷移金属、金属酵素
第15回:総合理解度確認
履修条件・関連項目
少なくとも無機化学Ⅰを履修していること。1年で履修する他の化学系基礎科目も履修していることが望ましい。
テキスト・教科書
シュライバー・アトキンス「無機化学」上および下 第4版
参考書
コットン、ウィルキンソン、ガウス「基礎無機化学」、萩野博ほか「基本無機化学」、Neil G. Connellyほか「無機化学命名法」、ミースラータール「無機化学」Ⅰ、Ⅱ、バッソロ、ジョンソン「配位化学」。小倉興太郎「無機化学概論」など
成績評価の方法
中間および総合理解度確認、毎回行う小テスト、出席による。
教員から一言
化学系基礎科目はまんべんなく履修すること。無機化学を有機化学の目で、有機化学を無機化学の目で見て下さい。化学のおもしろさが倍増するはずです。化学を学ぶ際、広い視野を持って勉強して下さい。化学における基礎として 最低必要な内容を解説するのでよく理解して下さい。分からないことがある場合はいつでも、聞いてください。
キーワード
分子構造、分子軌道法、金属錯体、原子価結合法、結晶場理論
オフィスアワー
質問は決して授業の妨げになることはないので、分からないことは、いつでも質問してほしい。なお、昼休み時間は毎日オフィスアワーとするので、気楽に教官室まで質問に来てください。
備考1
2017年度より、教科書が変更になります。
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2017/03/19 18:01:17