科目名[英文名]
森林-人間系科学論Ⅰ   [Human Dimensions os Forest Resources Management I]
区分   選択必修   単位数 1 
対象学科等   対象年次 1  開講時期 前学期 
授業形態 前学期  時間割番号 05MN5724
責任教員 [ローマ字表記]
土屋 俊幸   [TSUCHIYA Toshiyuki]
所属 感染症未来疫学研究センター 研究室 1-426  メールアドレス

概要
 「森林ー人間系科学」とは何だろうか?この領域には、もう少し概念がはっきりした既存の研究分野として、森林政策学、森林(林業)経済学、森林社会学などがあるが、あえて森林ー人間系科学と名乗るからには、それなりの理由がなければならない。この講義の担当者は、それを「学際性」と考えた。既存の学問体系、あるいはディシプリンの壁をまたいで、あるいは乗り越えて、森林と人間社会との関係について考究する研究分野、というイメージである。
では、具体的にどのような内容を持つ研究分野なのか?結論として担当者が到達したのは、既存の研究分野では捉えきれないような新しい問題、あるいは現象について扱うこと、具体的には、森林だけでなく農地・河川・都市などの他の土地利用も含めたランドスケープレベルでの自然資源管理のあり方の考察、そうした管理を行う際に必須な市民参加・住民参加のあり方を探る研究、さらに参加の原動力としての森林を中心とした自然環境の保全に関わる住民運動・市民運動の研究、以上のような研究の背景としての思想の研究、などである。
到達基準
1)社会科学系の論文を読んで理解し、論文の論点について、自分の考えを文章にすることができる。
2)講義の時間に、上記論文の論点について自分の考えを述べ、他の学生や教員と、議論を交わすことができる。
3)この講義での毎回の議論を踏まえて、自分の考えを事例の紹介と共に、一つの文章としてまとめることができる。
授業内容
 予め配布した論文を受講生が事前に読み、「質問・意見・感想」(リスポンス)をメールで担当教員に送る。教員はリスポンスを事前にまとめ、授業時に配布する。授業では、教員による簡単な解説の後、参加者がリスポンスを元に討論を行う。時間外も含めた「参加型」講義である。
 旧カリキュラムでは少人数による深い議論を行ってきたが、新カリキュラムの2015年度は多数の履修者がとったことから、2回で1本(あるいは関連した2本)の論文について議論する形に改めた。しかし、2016年度は適正な人数(7人)だったことから、1回に1本の論文について議論する以前の形に戻した。従って、どちらの形を取るかは履修者の数に依る。

第1回:ガイダンス
第2回・第3回:1本目の論文に関する議論・
第4回・第5回:2本目の論文に関する議論
第6回・第7回:3本目の論文に関する議論
第8回: まとめ
 
 例えば、昨年は以下のような論文を読んで自由な議論を行った。今年度もおおむね同じような傾向の論文を読むことになるが、履修生が多い場合は、論文の本数は半減することになる。どのような論文を読むかは、履修生と話し合って決めたい。

土屋俊幸・梶 光一:「統合的な野生動物管理システム」梶・土屋編著『野生動物管理システム』東京大学出版会、2014年
井上 真『コモンズの思想を求めて』岩波書店、2004年
井上 真「自然資源「協治」の設計指針」室田武編著『環境ガバナンス叢書③グローバル時代のローカル・コモンズ』ミネルヴァ書房、2009年
宮内泰介「環境自治のしくみづくりー正統性を組みなおす」『環境社会学研究』7、2001年
桑子敏雄『環境の哲学(第7章 原生自然と空間の履歴)』、講談社学術文庫、1999年

 なお、参考までに後期の「森林ー人間系科学論 II」では、下記論文等を毎回、1論文ずつ読んで議論した。議論が白熱した場合は、2回にわたって議論した。

関礼子「この海をなぜ守るのかー織田が浜運動を支えた人びと」、富田涼都「自然環境に対する協働における『一時的な同意』の可能性」、松村正治「里山ボランティアにかかわる生態学的ポリティクスへの抗い方」、堀川三郎「場所と空間の社会学―都市空間の保存運動は何を意味するのか―」



履修条件・関連項目
特になし。森林系の科目を取っているかどうかは不問。
テキスト・教科書
読んでもらう論文を、基本的に前回の講義の際に配布する。
参考書
成績評価の方法
 レポートの評価60%、講義中の議論20%、授業前後の「質問・意見・感想」の内容の評価20%。IIでは、3回にわたって、予め提出されたレポートの合評会を全員で行った。
 昨年度までの4年間に提出されたレポートの主なテーマは以下のとおり。瀬戸内トラストで実践された立木トラストの課題、獣害問題における「一時的な同意」の可能性〜青森県下北半島佐井村のニホンザル問題を事例として〜、「公」と「私」の対立において、より良い終着点を見つけるには?〜稲城市南山開発問題から考える〜、里山の市民デザインの可能性について考える-東京都の保全地域を事例に-、山梨県北杜市のオオムラサキ保護活動から「環境自治のしくみ」を考える、保全ボランティア活動における専門性の担保はどのようにして実現できるか?、時代遅れの土地利用計画への抵抗ー神奈川県三浦市北側湿地における保全とビジネス、『人間-自然』の多様な価値づけを認めた上での生態学的な視点の導入の検討、国立公園管理に見る正統性の組みなおし―日光パークボランティアを事例として―、何を守るのか?―日本国内の環境運動の展開から―、運動には科学的な根拠は必要なのか〜遺伝資源問題における住民による特許無効化運動を例として〜、正当性について考える〜ナショナルトラストキナシベツ自然保護地区を事例として〜、コモンズと権力―新潟県旧山北町山川郷の伝統的サケ漁を事例として―、石川県奥能登地域における里山里海保全の取り組み―里山ボランティア、生態学的ポリティクスの視点より―、トップダウンとボトムアップ双方向からのアプローチ-長野県飯田市の教育旅行型都市農村交流を事例に-、行政によるプロジェクトの事例分析〜「子どもの水辺」再発見プロジェクトの検討〜、地方自治体における市民参加型の地球温暖化対策を推進する仕組みと社会的背景、順応的管理の課題とフレーミングの再考、新しい都市評価としての官能都市の検討、環境正義についての考察、外国人花嫁からみた人材の定着について、なぜその林を守るのか、環境社会学における正義論の基本問題。







教員から一言
 受講生数は年度により大きく変動し、例えば2007度は3人だったが、私も含めた4人で非常に楽しくまた深い議論ができたと思っている。一方、2009年度は13人で、幅広い議論ができたが、少々人数が多すぎて、議論が収束しなかった嫌いがある。2013度は10人、2014年度は5人だった。制度が変わった2015年度は、前期の「I」は13人、後期の「II」は7人だった。昨年度2016年度は、前期の「I」をとった7人が全員、後期の「II」の履修を希望したので、後期も7人だった。今年度も、ぜひやる気のある学生に受講していただきたい。上記のように、無理矢理でも参加させられるから、受け身の学生は悲劇である。
 一方、他専攻、特に共生持続社会学専攻の学生の受講を強く期待する。毎年、2人以上のMS専攻の学生が履修してくれており、異なる専攻の学生の間の議論がお互いたいへん刺激になっている。MT,MIからの参加も期待する。
キーワード
自然資源管理、自然環境保全、自然保護運動、住民、市民、合意形成、エコシステムマネジメント、流域管理、地域環境ガバナンス、パートナーシップ、正統性、空間の履歴、生活環境主義
オフィスアワー
より深く内容を知りたい人、メールでは書けない「質問・意見・感想」がある人は、事前にメールでアポイントメントとをとって研究室まで来てください。
備考1
備考2
参照ホームページ
http://toshitsuchiya.la.coocan.jp/SiteTT/ (土屋のHP)
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2017/04/06 19:04:05