科目名[英文名]
森林政策学   [Forest Policy]
区分   選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 3  開講時期 後学期 
授業形態 後学期  時間割番号 01RN3267
責任教員 [ローマ字表記]
土屋 俊幸   [TSUCHIYA Toshiyuki]
所属 感染症未来疫学研究センター 研究室   メールアドレス

概要
○講義の目的:
 日本における森林政策の特徴、その変遷、および政策の決定・実施の仕組みの概略を押さえた上で、森林政策のあり方を、政策の大項目別に議論し、最終的に全体的な森林政策のあり方について、自分なりの考えを持てるようにする。

○本年度の講義の方針:
 2010年の9月末から10月初めにかけて、ドイツのミュンヘン工科大学農学部での「持続的森林管理」の研修に参加した際、工科大学の林政学教授による講義に接し、大きな衝撃を受けた。それは、政策の内容を講義するものではなく、なぜその政策が必要なのかを受講生自身に考えてもらうものだったからである。果たしてそうした講義が農工大の地域生態システム学科でも可能かどうか、それ以来考えてきたが、結論的に言えば、少なくとも、1年次に「地域社会システム計画論」を受講した上で、2年次に「森林計画学実習」を履修した学生であれば、そうした「考える」授業も可能なのではないかと考えた。
 ただし、「考える」授業は、効率的ではない。普通の授業のように、「結論」としての実際の政策のみを教えるということにはならないからである。従って、どうしても提供できる情報量はかなり減らさざるを得ないので、その分をどう補えばよいかを考えたが、現状では良い教科書がないことから、「森林・林業白書」によって、少なくとも現状の政策とその実施の結果について理解してもらうことにした。
 以上のような考えで2011年度以降講義を行っている。しかし、当初、履修生の評価は、まさに賛否両論が相半ばした。賛成派は、上記のような「考える」点を高く評価した。反対派は、討論の前提となる、情報・認識の不足を訴えた。また、討論時間の短さに不満を述べるものも多かった。だが、結論としては、今年度も同様の方式、つまり後半の半分を、毎回異なったテーマ別の討論にあてることとした。理由は、新カリキュラムで、この講義が3年次前期から3年次後期に移動し、履修生の森林政策への理解・認識が高くなってきていること、白書の自習などで、相当程度、知識不足は解消できることがこれまでの経験からわかってきたこと等からである。
 ただし、このような形式の講義は、正直言って担当教員も経験がそれほど豊富なわけではなく、また履修生がどの程度討論に積極的に参加してくれるかによっても大きく議論の内容が異なることから、不安定な授業とならざるを得ない。履修生の皆さんには、できたら、その不安定さを甘受していただき、学生・教員共同のチャレンジとして、積極的に参加していただきたい。
 なお、今年度については、2018年が長年の課題だった森林環境税・森林環境譲与税の新設が確定し、また新法として森林経営管理法が制定され、さらに来年には国有林野管理経営法の改正による「長期・大ロット」の国有林の民間企業への経営権移譲が検討されており、大きな林政の転換期を迎えていることから、こうした最近の森林・林業政策の内容に焦点を当てて議論したい。幸い、一連の政策転換の渦中にいることから、政策形成過程と同時進行の議論ができるかも知れない。
到達基準
1)日本の森林政策の特徴を理解し、説明することができる。
2)主要な森林政策について、概要を理解し、その問題点や評価すべき点について、自分の考えを持ち、他の学生との討論において、その考えをもとに議論することができる。
授業内容
 第10回からは、「概要」で説明したように、テーマ別の討論を行なう。

第1回: ガイダンス。土屋の研究との位置関係。森林政策とは?
第2回:日本の森林政策の特徴
第3回:日本の森林政策の変遷(1)―明治期
第4回:日本の森林政策の変遷(2)―第二次世界大戦前
第5回:日本の森林政策の変遷(3)―第二次世界大戦後
第6回:日本の森林政策の変遷(4)―高度経済成長期
第7回:日本の森林政策の変遷(5)―1990年代以降
第8回:森林政策の決定過程・実施過程―政府(行政)の役割と仕組み
第9回:現在の森林政策:森林・林業再生プランから「新たな森林管理システム」まで
第10回:政策のあり方:討論(1) 国有林
第11回:政策のあり方:討論(2) 森林環境税
第12回:政策のあり方:討論(3) 新たな森林管理システム
第13回:政策のあり方:討論(4) 自伐林業
第14回:政策のあり方:討論(5) 山村
第15回:政策のあり方:討論(6) 環境

○毎回の授業の仕方
・前半第9回まで
①リスポンスへの回答 30分
②プリントを使った講義 1時間
・後半
①リスポンスへの回答 20分
②白書による説明 20分
③討論 50分
履修条件・関連項目
地域社会システム計画論、森林計画学実習、農村地域計画学など。ただし、これらの科目を履修していなくても、本人の努力次第で履修は可能である。
テキスト・教科書
林野庁編『森林・林業白書』平成30年版、農林統計協会あるいは全国林業改良普及協会刊(林野庁ホームページからダウンロードも可)。その他に毎回レジュメ、資料を配付する。
参考書
東京農工大学編『森林・林業実務必携』朝倉書店、2007年、半田良一編『林政学』文永堂出版、1995年、遠藤日雄編『現代森林政策学』日本林業調査会、2008年、森林総合研究所編『改訂 森林・林業・木材産業の将来予測』日本林業調査会、2012年、志賀和人編著『森林管理制度論』日本林業調査会、2016年

成績評価の方法
出席点(2割)+リスポンス(2割)+レポート(6割)

・リスポンス(質問・意見・感想) 月曜日昼12時までに、toshit@cc.tuat.ac.jpへ、PC、あるいは携帯でメール送付。表題は、『森林政策学第○回 氏名』。
教員から一言
 ただ聞いているだけではこの授業は恐ろしくつまらない。積極的に質問し、議論に参加すること。特に後半は、議論への参加が必須。その場での質問に躊躇するならば、メールでの「質問・意見・感想」(リスポンス)の際にすること。
キーワード
入会林野、国有林、補助金、森林組合、保安林、公共事業、資源政策、環境政策、森林・林業基本法
オフィスアワー
 事前にメールでアポイントメントを取って研究室に来てください。
備考1
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2018/10/03 14:22:09