科目名[英文名] | |||||
無機化学Ⅰ [Inorganic Chemistry Ⅰ] | |||||
区分 | 工学部専門科目等 | 選択必修 | 単位数 | 2 | |
対象学科等 | 対象年次 | 1~4 | 開講時期 | 後学期 | |
授業形態 | 後学期 | 時間割番号 | 021315 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
尾﨑 弘行 [OZAKI Hiroyuki] | |||||
所属 | 工学部 | 研究室 | メールアドレス |
概要 |
化学は物質を研究対象とし、その性質と変化を究める学問である。物質の持つ様々な性質は、構成原子の特性に依存し、物質の変化は原子の離合集散に由来する。本講義では、原子の構造(特に、原子内の電子の数・エネルギー・分布)とその原子番号による周期的な変化を理解するとともに、原子の組合せに応じて多様な化学結合が生じ、これが物質の構造・性質と密接に関係していることを、代表的な無機単体・化合物を例にとり学ぶ。 |
到達基準 |
第 1 部では、「オービタル(軌道)」の意味を理解し、元素の周期律が発現する必然性を把握する。第 2 部では、共有結合を局在化した結合で表現する方法と分子全体に非局在化した分子軌道により解釈する方法を身につける。第 3 部では、イオン性固体、配位化合物、酸・塩基など、無機化学に特有の内容を理解する。 |
授業内容 |
第 0 部 序論 第 1 回 無機化学という学問の特徴について有機化学や物理化学等の他の化学分野と比較して述べ、本講義で扱う具体的内容をテキストの章・節を参照しながら示した後、以後の講義で必要な最低限の熱化学(テキスト 1 章 2 節)について説明する。 第 1 部 原子構造と周期律(テキスト 2 章) 第 2 回 原子軌道の量子数、エネルギー、縮重、数学的表現、実数関数化について説明する。 第 3 回 原子軌道を図示するための数種類の方法について学んだ後、改めて原子軌道とは何か、ボルンの解釈にしたがってその意味するところを考え、動径分布関数を導入する。 第 4 回 パウリの排他原理を紹介後、動径分布関数に基づき原子軌道の内殻への貫入の効果を検討し、構成原理を導入する。その後、構成原理にしたがって原子番号順に原子の電子配置を構築していく。電子が原子軌道に収容されるパターンが d 電子や f 電子の出現により改変される様子に注目するとともに、ときおり不規則性が現れることを知る。 第 5 回 前回に続き第 7 周期元素までの原子の電子配置を構築後、族ごとに電子配置の特徴を調べる。フントの規則にしたがい縮重した原子軌道に電子を分配する方法を学ぶ。イオン化エネルギーの原子番号依存性を論じた後、3 通りの方法で電気陰性度を定義する。最後に化学種の磁気的性質に言及する。 第 2 部 共有結合と分子構造(テキスト 3 章) 第 6 回 共有結合を論ずるための伝統的なモデルである局在化結合近似について、無機化学種を例に取り説明する。ルイス構造と共鳴の概念、結合電子対と孤立電子対の違いを把握した後、水素化ベリリウムの共有結合はいかなる軌道から成るか考え、その構築に必要な sp 混成軌道を導入する。 第 7 回 三フッ化ホウ素、メタン、二酸化炭素の結合電子対や孤立電子対を構成原子の軌道から作るために sp2 混成軌道、sp3 混成軌道を導入する。さらに原子価殻電子対反発モデルを導入し、ABn 型化学種の形状と類似化学種の結合角の大小関係を議論する。 第 8 回 最初の 50 分を用いて中間試験を行う。その後、共有結合を扱うもう 1 つのモデル、非局在化軌道近似すなわち分子軌道論に入る。水素分子イオンを使って結合性相互作用と反結合性相互作用ならびにその核間距離依存性について説明する。 第 9 回 原子軌道の組み合わせと生成する分子軌道・結合のタイプ、相互作用の大きさの関係を説明後、具体的な等核二原子分子の話に入る。水素分子とリチウム分子の軌道のエネルギーと波動関数を定性的に描き、分子軌道に命名し、電子を配置する。またヘリウム分子とベリリウム分子ができないことを示す。 第 10 回 ホウ素からフッ素までの等核二原子分子の軌道を組み立てる。結合次数の概念を導入し、結合エネルギーと結合距離の原子番号依存性、陽・陰イオン化によるそれらの変化、ならびに中性分子およびイオンの磁性について論ずる。 第 3 部 第 11 回 気体状態の陽・陰イオンからイオン性固体 1 モルが生成するときの標準エンタルピー変化である格子エネルギーを、イオンの配列パターンに基づいて見積もるとともに、ボルン-ハーバーサイクルを利用して実験データから算出する方法を解説する。また、代表的なイオン性固体の構造と陽・陰イオンの半径比および配位数の関係を学ぶ。(テキスト 4 章) 第 12 回 次回の主題 「錯体」 を形成する 「配位子」 となる、代表的な多原子陰イオンを取り上げ、その構造、配位様式、反応、性質について概説する。(テキスト 5 章) 第 13 回 錯体化学の基礎として、錯体の構造(配位数と立体構造)、配位子のタイプ、異性現象、命名法について概説する。(テキスト 6 章の 1-3 節; 4 節以降は無機化学Ⅲで扱う) 第 14 回 無機化学において重要な溶媒の性質(極性、溶媒和、自己解離など)について論ずる。次に酸・塩基の 6 種類の定義を説明し、これまでの知見を総動員して類似化合物の(特定の定義による)酸あるいは塩基としての強弱とその原因を議論する。代表的な酸の性質についても概説する。(テキスト 7 章) 第 15 回 代表的な単体の多原子分子・固体の構造と性質について概説する。(テキスト 8 章) |
履修条件・関連項目 |
本講義の第 1・2 部の内容の理論的な背景は、2 年前・後期の量子化学Ⅰ・Ⅱで詳しく学ぶ。 |
テキスト・教科書 |
テキスト 「コットン・ウィルキンソン・ガウス 基礎無機化学(第 3 版)」 培風館 |
参考書 |
必要に応じてプリントを配布する。物理化学系諸科目のテキストである「アトキンス 物理化学(上)(第 10 版)」の量子化学に関する章(7 - 10 章)も参考になる。 |
成績評価の方法 |
期末試験 (6割) + 中間試験 (3割) + 平常点 (随時行う演習、任意レポート) (1割)。 |
教員から一言 |
現在の化学は「暗記の学問」ではなく、量子論を背景として構築・体系化された学問である。この認識のもとに、無機化学だけでなく、分子ひとつひとつの個性を論ずる化学系諸科目に不可欠な、基本的概念と原理を身につけることを目標とする。 講義における受講生諸君の理解度や中間試験の結果によっては、各事項の説明を繰り返すことがあるため、【授業内容】に記載した通りの進行が不可能な場合がある。また、学年暦の都合や学園祭に伴う休講等の理由により、通常授業だけでは所定の授業時間を確保できない可能性があり、その場合は通常の授業時間以外にも講義を行う。 |
キーワード |
原子・分子 周期律 共有結合 イオン性固体 酸・塩基 |
オフィスアワー |
月曜日 12:00 - 13:00 (講義日) |
備考1 |
備考2 |
参照ホームページ |
開講言語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2018/03/22 13:37:01 |