科目名[英文名] | |||||
有機材料構造特論Ⅰ [Structures of Organic Materials I] | |||||
区分 | 前期課程科目 | 選択必修 | 単位数 | 2 | |
対象学科等 | 対象年次 | ~ | 開講時期 | 前学期 | |
授業形態 | 前学期 | 時間割番号 | 1060211 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
尾﨑 弘行, 岡本 昭子 [OZAKI Hiroyuki, OKAMOTO Akiko] | |||||
所属 | 工学部 | 研究室 | メールアドレス |
概要 |
有機材料は有機分子の集合体であり、有機材料の特性のかなりの部分が構成分子によって決まる。分子の構造・反応・機能を決めるのは電子のふるまいであるから、分子の電子構造に注目して有機材料の設計を行うことは重要である。本講義では、関連する学部講義に引き続き電子構造を検討する方法と電子構造に基づいて分子の特性を論ずる方法を学ぶ。 |
到達基準 |
(1) 各自の専門の研究に専念している間に失われたミクロな物理化学に関する素養の回復を図る。 (2) 紙と鉛筆で分子の電子構造、安定性、反応性を検討する能力を身につける。 (3) 将来各自の研究で必要が生じたときに、量子化学計算を実行したり、この分野の論文を読破したりできるように、独力でさらなる学習を行うための足がかりをつくる。 |
授業内容 |
第 1 部 復習と準備、分子の形と軌道 第 1 回 現時点でのミクロな物理化学の理解度 (というよりも忘れた度合) をみるため、復習テストを行う。おもな出題範囲は学部の量子化学 I・II と構造化学であり、一部無機・有機化学で履修する内容を含むことがある。復習テストの結果は成績評価とは無関係であるが、各自が学部時代に学んだ重要項目(第 2 回以降の内容を参照) を復習したうえで初回授業に臨むことを希望する。復習テストの結果が芳しくない場合は、下記に加えて 1-数回をさらに復習に充て、その回数分の内容を第 3 部から割愛する。 第 2 回 前回の試験結果を踏まえて、例えば次のような基礎的事項を復習する: 波動関数の意味、AO の形状とエネルギー、水素類似原子、多電子原子、変分原理、スピン、LCAO 近似、結合性 MO と反結合性 MO、ヒュッケル近似。 第 3 回 量子化学 II で導いた l : l の軌道相互作用の原理を復習後、証明なしに利用していた 2 : 1 の相互作用の原理を導く。学部では扱わなかった水素を含まない異核 2 原子分子の MO を組み立ててみる。 第 4 回 群論を利用した MO の構築を復習し、学部では割愛した幾何構造と電子構造の関係を Walsh ダイアグラムを描いて議諭する。諸君に身近な例として、ポリマーの立体配座に依存する MO のエネルギー・波動関数についても紹介する。 第 5 回 カルボニル化合物、ベンゼン、複素環などの π 電子系を組み立てる。芳香族性について言及する。基本的分子のコンピューターによる MO 計算の出力を解読する。 第 2 部 軌道相互作用と反応性 第 6 回 化学種 A の被占軌道 (電子対) と化学種 B の空軌道の相互作用は、A の HOMO と B の LUMO の間で最も効果的に起こり、HOMO/LUMO の広がりが反応の位置選択性を支配することを、カルボニル化合物や芳香族炭化水素の置換反応を例に挙げて示す。 第 7 回 化学種 A、B が同時に 2 ヵ所で結合を作るため、軌道の広がりよりも対称性が反応の立体選択性を支配する例として環化付加反応を取り上げる。ジエンとジエノフィルのどちらが電子供与体でどちらが電子受容体かについても考察する。 第 8 回 電子環状反応に対して、便宜的に 2 つに分けた分子の部分構造 (パーツ) 同士が 2 ヵ所で同時に効果的に HOMO-LUMO 相互作用を起こし得る過程を検討する。 第 9 回 シグマートロピー反応とキレトロピー反応について、組み替えが起こる結合をパーツと見なしてそれらの HOMO-LUMO 相互作用を考え、また、軌道位相の連続条件も導入して立体反転または立体保持を説明する。 第 10 回 反応の進行中に軌道の対称性は保存されるという観点から電子環状反応と環化付加反応を再検討し、軌道相関図の利用により対称許容反応か対称禁制反応か判別する。 第 3 部 非経験的 MO 計算を目指して 第 11 回 Li に対して同タイプのオービタル 3 つの積を試行関数として変分計算を行うと妙な結果が得られることを示し、Pauli の原理の重要性を認識する。スピンと軌道の両方を考慮した波動関数 (スピン軌道) から成る、反対称化された波動関数 (Slater 行列式) をつくる。 第 12 回 Slater 行列式を試行関数として用いた場合の基底状態のエネルギー期待値 Ee を算出する。 第 13 回 規格直交条件を付帯条件としてスピン軌道を変化させ、Ee の極値を求めることにより、最良のスピン軌道の組を見出すための Hartree-Fock 方程式を得る。 第 14 回 (空間) 軌道が基底関数の線形結合で表される場合の Hartree-Fock 方程式 (Hartree-Fock-Roothaan 方程式) を求める。基底関数系について簡単に触れる。 第 15 回 期末試験 |
履修条件・関連項目 |
工学部有機材料化学科の量子化学 I・II および構造化学 (またはこれらと同等の科目) の単位を取得済みであること。 |
テキスト・教科書 |
参考書 |
適宜プリントを配布する。 |
成績評価の方法 |
期末試験 50 %、平常点 (授業中の質疑応答; 下記参照) 50 %で評価する。 |
教員から一言 |
現実の系を単純化するための化学的モデルの意義と限界を理解するとともに、"ブラックボックス化" を極力避ける姿勢を身につけていただきたい。授業中に 1 人ずつ指名して質問するので、科学的な説明・議論を行う能力の涵養を図ることを期待する。 |
キーワード |
軌道のエネルギー・広がり・対称性・相互作用、幾何構造-電子構造相関、化学反応性、Slater行列式、Hartree-Fock (-Roothaan) 方程式 |
オフィスアワー |
木曜日 (講義日) 18:00 - 19:00 |
備考1 |
備考2 |
参照ホームページ |
開講言語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2018/03/22 13:37:46 |