肉用鶏(ブロイラー)および産卵鶏は,これまでの増体量・産卵率を指標においた育種選抜や高エネルギー高栄養飼料を用いた飼育プログラムの開発により,鶏肉・鶏卵の生産性を大幅に向上させてきた。その反面,いずれの品種においても,急速な育種選抜に連動するべき代謝生理・栄養生理機能の改善が充分に対応していないため,腹水症,脚弱,免疫能の低下,脂肪肝,脂肪過剰蓄積などの様々な代謝障害・代謝異常が発生しており,現在,鶏肉・鶏卵生産上の大きな問題点となっている。すなわち,鶏肉・鶏卵の生産性のみではなく,それらの品質を向上させるためには,これらの代謝異常の発現要因の解析とその改善方法の探索を進めなければならない。
我々はこれまで,鶏の代謝障害・代謝異常と大きく関連する脂質代謝異常に注目し,その代謝特性の解明とその制御法の開発・研究,すなわち①肥満(腹腔内脂肪蓄積の減少,飼料効率と飼料消費の浪費の節約),②コレステロール代謝(低コレステロール食肉・卵の開発)③卵胞の発達(マルチデザイナー卵の作出),④高血糖(エネルギー代謝調節による骨格筋の発達制御)の4つの分野を研究テーマとして,その分子栄養学的解明と栄養制御法の開発を進めている。本講義では,これらの家禽に関する分子栄養学的解析を紹介するとともに,家畜の分子栄養の将来を考えていきたい。
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