科目名[英文名]
動物病理学各論B(他臓器・組織)   [Systemic Veterinary Pathology B]
区分   選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 4  開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 01VN4213
責任教員 [ローマ字表記]
渋谷 淳, 吉田 敏則   [SHIBUTANI Makoto, YOSHIDA Toshinori]
所属 農学部 研究室 獣医病理学研究室  メールアドレス

概要
動物病理学総論を基礎とし、動物の各臓器系統に発現する病理形態学的変化とその病態を動物病理学各論 A(3年次後期)とB(4年次前期)を通して修得する。この臓器病理学の修得は臨床獣医学への導入的役割を果たす。また、薬物・食物などの安全性試験に応用される。本科目は、実務経験のある教員による授業科目である。担当教員は毒性病理学分野において、毒性試験での病理診断の経験があり、授業では病変の実例を交えた解説をする。
到達基準
本科目のディプロマ・ポリシーの観点:
本学HP(三つのポリシー)のカリキュラムマップを参照してください。
https://www.tuat.ac.jp/campuslife_career/campuslife/policy/

動物病理学各論Bでは、動物における以下の臓器に現れる各疾患について、病理形態学を基盤として、病理学的特徴を病理発生や比較病理学的観点から理解する。

1.泌尿器系(腎臓、尿管・膀胱・尿道):例)①糸球体腎炎の原因、発生機序、分類を説明できる。②尿細管性腎病変の病理学的特徴を説明できる。③急性・慢性腎炎の病理学的特徴を説明できる。④腎乳頭壊死と他の尿路系の病変の病理学的特徴を説明できる。
2.生殖器(精巣・精巣上体・精管・陰嚢、雄副生殖腺[精嚢腺、前立腺、尿道球腺]、陰茎・包皮、卵巣、卵管、子宮、胎盤、子宮頸管・膣・陰門、乳腺):例)①精巣炎の原因と病理学的特徴を説明できる。②精巣腫瘍と卵巣腫瘍の分類を説明できる。③卵巣および子宮の疾患を説明できる。④異常産[流産、死産]を引き起こす感染症の病理学的特徴を説明できる。
3.内分泌系(脳下垂体、甲状腺、上皮小体、副腎、その他の内分泌器):例)①甲状腺腫の原因、分類を病理学的に説明できる。②甲状腺炎の病理学的特徴を説明できる。③上皮小体(副甲状腺)の機能亢進症と機能低下症の原因、病態、病理学的特徴を説明できる。④クッシング症候群の病態、病理学的特徴を説明できる。
4.神経系(脳、脊髄、末梢神経):例)①神経系の基本的病理変化を説明できる。②脳炎および髄膜炎の分類、病理学的特徴を説明できる。③神経系における栄養性疾患、中毒性疾患の病理学的特徴を説明できる。④先天性および周産期の脳障害、水頭症を説明できる。⑤脊髄変性性疾患と末梢神経疾患の病理学的特徴を説明できる。
5.感覚器(眼、耳):例)①白内障と緑内障の発症機序、病理学的特徴を説明できる。②角結膜炎、ぶどう膜炎の病理学的特徴を説明できる。③耳の疾患の病理学的特徴を説明できる。
6.運動器(骨、関節・腱、骨格筋):例)①代謝性骨疾患と中毒性骨疾患の病理学的特徴を説明できる。②循環障害による骨疾患の病理学的特徴を説明できる。③関節疾患の原因と病理学的特徴を説明できる。④骨格筋の基本病変を説明できる。⑤炎症性筋疾患の病理学的特徴を説明できる。⑥神経原性筋疾患の分類と病理学的特徴を説明できる。⑦筋原性筋疾患の分類と病理学的特徴を説明できる。
7.外皮(皮膚):例)①皮膚の基本病変を説明できる。②皮膚炎の組織学的特徴と代表的疾患を説明できる。③アレルギー性皮膚炎を説明できる。④自己免疫性皮膚疾患の分類と病理学的特徴を説明できる。⑤代表的な皮膚腫瘍の病理学的特徴を説明できる。
授業内容
動物病理学各論B(他臓器・組織)の授業は、3年次第3期の動物病理学各論Aに続き、以下の組織における代表的な疾患と病理・病態発生について講義する。授業期間の間に中間試験(第1回目から第6回目の内容)と期末試験(第7回から第15回目の内容)を実施する。

動物病理学各論B(他臓器・組織)(4年次第1学期):
1. 泌尿器①(教科書第6章、259-279):腎臓の解剖・生理、先天異常、糸球体疾患、尿細管ならびに間質性疾患。
2. 泌尿器②(教科書第6章、280-294):腎臓の循環障害、寄生虫病、腫瘍;尿管・膀胱・尿道の解剖・生理、先天異常、尿路結石、炎症、腫瘍。
3. 生殖器①(教科書第7章、295-303):精巣・精巣上体・精管・陰嚢の解剖・生理、先天異常、変性、精巣炎、精巣上体炎、陰嚢炎、腫瘍;雄副生殖腺(精嚢腺、前立腺、尿道球腺)の解剖・生理、先天異常、肥大、炎症、腫瘍;陰茎・包皮の解剖・生理、陰嚢包皮炎、腫瘍。
4. 生殖器②(教科書第7章、303-328):卵巣の解剖・生理、発生と先天異常、代謝障害(変性、退行性変化)、嚢胞性疾患、腫瘍;卵管の水腫、卵管炎、卵管膿腫、鶏の卵管腫瘍;子宮の解剖・生理、先天異常、変位、内膜の増生の異常、炎症、腫瘍;胎盤:解剖・生理、羊水過多症、尿膜水過多症、羊膜斑、石灰沈着、流産、死産;子宮頚管、膣、陰門:解剖・生理、嚢胞、炎症、腫瘍;乳腺:解剖・生理、乳房炎、腫瘍。
5. 内分泌器(教科書第10章、385-406):総説;脳下垂体の解剖・生理、嚢胞、下垂体機能低下症、腫瘍;甲状腺の解剖・生理、先天異常、甲状腺腫、中毒性甲状腺腫(甲状腺機能亢進症)、甲状腺機能低下の原因と全身的影響、腫瘍;上皮小体の解剖・生理、上皮小体嚢胞、亢進症、腫瘍;副腎の解剖・生理、先天異常、副腎皮質の萎縮、変性、壊死、慢性副腎皮質機能低下症、副腎皮質機能亢進症、腫瘍および腫瘍類似病変;そのほかの内分泌器:松果体、化学受容体。
6. 第1回から第5回目までの講義内容のまとめ、中間試験。
7. 神経系①(教科書第8章、329-372):脳の解剖・生理、死後変化、先天異常。
8. 神経系②(教科書第8章、329-345):脳の循環障害、外傷、栄養性疾患、中毒、加齢性変化、伝達性海綿状脳症。
9. 神経系③(教科書第8章、346-365):脳炎、脳腫瘍。
10. 神経系④(教科書第8章、365-372):脊髄の解剖・生理、先天異常、変性性疾患;末梢神経の外傷、機械的傷害、栄養性疾患、中毒、炎症、腫瘍。
11. 感覚器(教科書第9章、373-384):眼の解剖・生理、死後変化、先天異常、網膜剥離、網膜変性、白内障、緑内障、炎症、腫瘍;耳の解剖・生理、外耳の疾患、中耳の疾患、内耳の疾患、腫瘍および腫瘍類似疾患。
12. 運動器(教科書第11章、407-431):骨の解剖・生理、物理的損傷と骨の反応、先天異常、代謝性疾患、循環障害、骨炎、骨過剰形成性疾患および骨嚢胞、腫瘍;関節・腱:解剖・生理、先天異常、変性性関節疾患、関節炎、腱鞘炎、腫瘍;骨格筋:解剖・生理、一般病変、循環障害、動物の筋疾患。
13. 外皮①(教科書第12章、433-453):皮膚の解剖・生理、基本病変、先天性疾患、表皮の分化異常、色素沈着、物理化学的刺激および光刺激による病変、栄養性病変、内分泌性病変、アレルギー性皮膚炎、免疫介在性皮膚疾患。
14. 外皮②(教科書第12章、453-478):皮膚の感染性疾患、そのほかの皮膚疾患、皮膚腫瘍。
15. 第7回から第14回目までの講義内容のまとめ、期末試験。
履修条件・関連項目
獣医解剖学、獣医組織学、獣医生理学、獣医生化学、獣医微生物学、免疫学、獣医病理学総論を履修しておくこと。授業時間15時間に加え、配布した講義資料や教科書、参考書などを参照し、事前事後学習を行うこと。
テキスト・教科書
日本獣医病理学会編:動物病理学各論 第2版(文永堂出版)
日本獣医病理学会編:動物病理カラーアトラス 第2版(文永堂出版)
その他、必要に応じてプリントを配布する。
参考書
獣医病理学実習マニュアル 第2版(学窓社)。その他、Pathologic Basis of Veterinary Disease(James F. Zachary編、第6版 Elsevier出版)、Pathology of Domestic Animals(Grant Maxie編、第6版 Elsevier出版)、Tumors in Domestic Animals(Donald J. Meuten編、第5版 Wiley Blackwell出版)は解説が詳細で、掲載写真やイラストも豊富であるため、専門的な理解を進める上で良い参考書である。
成績評価の方法
中間と期末の定期試験で成績評価を行う。出席点は成績に加味しないが、中間試験の範囲までの授業と、中間試験後から期末試験までの範囲の授業で、それぞれ3回以上欠席した場合には、試験を受ける資格を失う。それぞれの試験で60点に達しなかった場合、1回のみ追試を行う。
教員から一言
病理学は獣医師国家試験科目の一部である。病理学は、基礎と臨床の中間に位置しており、病変を理解するためには、まず、解剖学、組織学、免疫学、微生物学などの知識を習得しておく必要がある。この病理学を習得していないと、外科学や内科学などの臨床分野への応用が困難となる。
キーワード
変性性病変、適応とその破綻による病変、循環障害、炎症、免疫病理学、腫瘍、奇形、栄養障害、中毒性病変
オフィスアワー
13:00〜18:30(教員室に在室中はいつでも歓迎します。)
備考1
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2019/03/21 18:44:23