科目名[英文名] | |||||
蛋白質科学 [Protein Science] | |||||
区分 | 工学部専門科目等 | 選択必修 | 単位数 | 1 | |
対象学科等 | 対象年次 | 2~4 | 開講時期 | 3学期 | |
授業形態 | 3学期 | 時間割番号 | 022119 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
池袋 一典, 黒田 裕 [IKEBUKURO Kazunori, KURODA Yutaka] | |||||
所属 | 工学部 | 研究室 | メールアドレス |
概要 |
多様化する社会・産業会のニーズはオーダメイドの生体触媒又は優れた耐久性を有する生体触媒の開発の必要性を打ち出してきた。このような趨勢の中、生体触媒として最も重要な役割を果たす蛋白質は、常に工学に注目されている。この蛋白質を工学的に応用するためには、蛋白質分子の機能と構造の相関を理解し、遺伝子レベルから酵素などの蛋白質を設計・改良できるようになることが必須である。本講義では、酵素反応速度論、蛋白質の熱力学的パラメータによる評価法を基に、蛋白質を設計・生産・応用するコンセプトを学ぶ。また、近年、生体内で情報伝達以外の機能を発揮している事が明らかになっていた核酸についても機能と構造の相関を説明する。 講義では、タンパク質をアミノ酸配列という一次元の情報として捉えるだけではなく、各々のタンパク質が固有な構造と物性を持つ物質として捉えることの重要性を強調する。この考えを基に、講義では、アミノ酸配列とタンパク質構造との関連、タンパク質の物性とその機能の関連、実験的な構造解析法、タンパク質構造の予測・比較・分類、分子間相互作用の検出・スクリーニングなど、ポストゲノム時代のタンパク質科学について述べる。 |
到達基準 |
蛋白質の構造・機能相関の基礎知識を得ることでき、それを改変するための蛋白質工学の手法論の基礎的理解が得られる。産業用酵素の例や産業化の際の留意点を知ることができる。 |
授業内容 |
蛋白質科学基礎;蛋白質科学の研究が誕生した背景・歴史・現状を学ぶ。酵素の分子認識と反応速度論;蛋白質工学によって酵素を改良した場合に、その改良を評価する際に必須となる酵素の基質特異性などの分子認識機構と反応速度を基準とした評価方法について理論と実験化学的基礎・実例を学ぶ。熱力学的パラメータとその評価;酵素の安定性を向上させることは蛋白質工学の一つの目標である。蛋白質の構造安定性を中心に、その熱理学的パラメータの種類、評価方法を学ぶ。遺伝子改変技術;遺伝子操作技術を基本とした各種変異導入法を学び、特に合成DNA を用いる部位特異的変異法の基礎と応用、分子内遺伝子組換えによるキメラ蛋白質の合成法、融合 蛋白質合成法について学ぶ。蛋白質生産技術;設計した改良蛋白質を効率的に生産・精製する技術の基礎を学ぶ。組換えDNA技術による遺伝子の高発現系について集中的に学ぶ。蛋白質科学の応用;蛋白質科学によって開発された新規分子の開発指針、研究例について、食品、医療、電子産業の産業別において物質生産用酵素と計測用酵素・蛋白質にわけて学ぶ。メタボリックエンジニアリング;メタボリックエンジニアリングは遺伝子操作技術を通して、細胞の有する代謝系を改良し、産業に応用する工学的アプローチを意味する。ここでは、今後の蛋白質科学応用研究の方向性として考えられる新しいメタボリックエンジニアリングの方向性を学ぶ。更に、近年発展が著しい核酸工学についても俯瞰的に解説し、蛋白質科学と比較しておくことにより、対象とする生体分子の特性に違いによるエンジニアリングのアプローチの仕方の違いを理解する。理論と実験科学の両側面から推進されている典型的な学際分野であり、既存の概念、領域にとらわれないダイナミックな発想で研究指針を身につける。 タンパク質科学という幅広い分野をすべてここでカバーすることは不可能である。そのため、講義では分野の全体像を見失わないように注意しながら、理論計算と実験手法の両方からテーマを選択している。特に、タンパク質を研究するための実験手法の説明を通じて、タンパク質が多面的な特徴を持つ物質であることの理解を目指す。一方で、その多面性を適切に捉える計算科学的手法の重要性を認識してもらうために、バイオインフォマティクス的な計算手法の説明とそのアルゴリズムについても述べる。勿論、以下では、紙数の関係上、タンパク質構造の基礎とタンパク質の構造の比較と構造データベースについて簡単に説明する。 1. ポリペプチド鎖としての蛋白質構造の基礎的概念(ゲノム、アミノ酸、ペプチド、蛋白質の安定性、非共有結合、疎水性効果など) 2. 蛋白質構造の基礎的概念(2次構造の同定法など、3次構造の分類など) 3. 蛋白質の構造比較法(DP法、DDP法、モンテカルロ法など) 4. 蛋白質の構造予測(2次構造予測、立体構造予測、CASPコンテスト 5. 分子相互作用の予測+小テスト 6. 蛋白質科学の概説(部位特異的変異法を中心に):蛋白質の機能・構造相関を学んだ上で、これを元に蛋白質をどう設計・改変し、その蛋白質を生産するかを概説する。 7. 進化分子工学の紹介(ファージディスプレイを中心に):蛋白質科学の手法の一つとしての進化分子工学を、ファージディスプレイ法を元に概説する。 8. 核酸工学の紹介:リボザイムのように、触媒機能など、従来知られていた情報保存・伝達機能以外にも重要な機能を発揮している事が明らかになった核酸の工学的応用と園手法について概説する。 9. アプタマーの概説:分子認識機能を発揮する核酸、アプタマーに関して基礎から応用まで概説する。 10. アプタマー研究の最前線:アプタマー研究の最前線研究を紹介する。 なお上記の内容の講義順序は年によって変わる。 |
履修条件・関連項目 |
基礎生物化学、基礎分子生物学、生命化学I及びII、分子生物学I及びII |
テキスト・教科書 |
「蛋白質科学入門」、有坂文雄著(裳華房)3200円 資料を適宜配布する。あるいはHPに掲示する。 |
参考書 |
タンパク質工学実験マニュアル」〔池原森男 編著〕講談社サイエンティフィクス Bioinformatics, Sequence and Genome Analysis (Second edition) David Mount CSHL pressバイオインフォマテイクス、ゲノム配列から機能解析、岡崎・坊農訳)メディカルサイエンスインターナショナル(9500円) |
成績評価の方法 |
講義中のレポート、単元ことの小テスト、学期末の試験結果を合わせて評価する。 |
教員から一言 |
最新の研究成果を掲載した論文を参照しながら進めていく。論文あるいは配布資料はほとんどが英文であるので技術者・研究者としての最低限の英語だけは身につけて授業に望んでほしい。本講義は、基礎生物化学、基礎分子生物学、生命化学I及びII、分子生物学I及びIIと密接な関係にあり、生命工学科の学生は必ず履修し、欠かさず履修して欲しい。 |
キーワード |
酵素 蛋白質 蛋白質の改良 蛋白質の創製 蛋白質性能・機能評価、蛋白質の構造、構造分離、構造比較、構造予測、安定性 |
オフィスアワー |
オフィスアワー:毎週月曜日16:00〜18:00黒田は、14:00〜16:00 |
備考1 |
備考2 |
参照ホームページ |
開講言語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2019/03/06 14:57:33 |