科目名[英文名]
有限要素法および演習   [Finite Element Method and Exercises]
区分 工学部専門科目等  選択必修   単位数 3 
対象学科等   対象年次 34  開講時期 3学期 
授業形態 3学期  時間割番号 023521
責任教員 [ローマ字表記]
山中 晃徳   [YAMANAKA Akinori]
所属 工学部 研究室   メールアドレス

概要
【なぜ有限要素法を学ぶ必要があるのか?】
 自動車、航空機などの輸送機械にはじまり、建築物や私達が日常生活で使用している携帯電話や家電製品などの機械製品の強度や耐久性をコンピューターシミュレーションにより計算する方法として、有限要素法が広く使用されている。 さらに、有限要素法は微分方程式をコンピューターに計算させる方法であるため、上記のような目的以外にも、微分方程式で表すことができる現象、たとえば熱流体の流れ(ナビエ・ストークス方程式)、電磁場の変化(ポアソン方程式)の計算方法としても使用されている。したがって現在では、様々な有限要素解析ソフトウェアが販売され、企業の研究・開発の現場でも非常に重要な計算技術として活用されている。しかし、有限要素解析ソフトウェアを使用すれば、たとえソフトウェア内で計算される内容を全く知らなくても、機械構造物の変形や強度などを解析することができてしまい、誤った計算結果に気付かずに機械製品を設計してしまうという危険性をはらんでいる。したがって、機械工学を学んだ研究者・エンジニアには、有限要素法に関連するしっかりとした基礎知識を持っていることが要求される。

【本講義の目的】
 本講義では、固体の弾性変形挙動を有限要素法で計算するための基礎知識(これは熱流体の流れなど他の現象を計算する場合にも非常に役に立つ)を習得することを目的とする。そのために、3年生前期までに学んだ材料力学、弾性力学の基礎を復習するとともに、その知識に基づき有限要素法の原理を学ぶ。さらに、有限要素法の計算方法、計算結果の可視化方法、計算結果の考察方法をサンプルプログラム等を用いた演習を通じて学ぶ。
到達基準
(1)固体の弾性変形挙動を表す基礎方程式を正しく理解できている。
(2)仮想仕事の原理など有限要素法の基礎理論および計算方法を正しく理解できている。
(3)有限要素解析の結果を正しく評価し、再解析の指針を立てることができる。
*ディプロマ・ポリシーについては、履修案内のカリキュラムマップを参照してください。
授業内容
1.本講義のイントロダクション 
1.1 本講義で有限要素法を学ぶ意義・目的を説明する。講義の日程、講義と演習の進め方、成績評価方法について説明する。
1.2 有限要素法のソフトウェアを使用し、いくつかの例題を解析する。ブラックボックスとしてソフトウェアを使うことを体験し、本講義を学ぶ意義を確認する。

2. 有限要素法の基礎 
2.1 バネ構造の解析を例に、有限要素法の原理、専門用語、計算手順を説明する。
2.2 簡単な1次元バネ構造解析の演習問題1を解き、有限要素法の基礎となる、力の釣合い方程式(力学的平衡方程式)をマトリクス(行列)形式で解くイメージを明確にする。

3 平面トラス構造のマトリクス解法
3.1 2章で学んだバネ構造の問題を発展させ、平面トラス構造に生じる変位と力をマトリクス解法で解く方法を学ぶ。要素剛性方程式の導出を学ぶ。
3.2 重ね合わせの原理により、全体剛性方程式を導く。さらに、境界条件を導入し、解を得られる形に導出する
3.2 平面トラス構造のマトリクス解析の演習問題2, 3を簡単なプログラミングとともに学ぶ。

4. ベクトルとテンソルの基礎
2次元弾性体の変形を解析するための有限要素法を学ぶ上で、最低限必要となるベクトルとテンソルの基礎について説明する。演習問題4を解き、3年生まで学んだことを復習する。

5. 材料力学と弾性力学の復習 
5.1 固体の弾性変形挙動を有限要素法で計算するために必要な、材料力学と弾性力学で学んだ基礎式(ひずみの定義式、応力-ひずみ関係式、力学的平衡方程式など)を復習する。
5.2 材料力学と弾性力学の演習問題5を解き、有限要素法の基礎を復習する。

6. 弾性体の境界値問題と仮想仕事の原理式の定式化 
6.1 有限要素法で解くべき境界値問題(固体内で生じる変位の微分方程式である力学的平衡方程式を与えられた境界条件の下で解くこと)の定義と、仮想仕事の原理式の導出について詳細に説明する。

7.1次元弾性体の有限要素法の定式化と演習① 
7.1 1次元弾性体を例に、仮想仕事の原理式を有限要素法で計算するための要素分割、形状関数の導入および要素剛性方程式の定式化について説明する。

8.1次元弾性体の有限要素法の定式化と演習② 
8.1 全体剛性方程式の導出および境界条件の導入について説明し、実際に手で計算することで有限要素法の計算手順を学ぶ。
8.2 全ポテンシャルエネルギーの原理とレイリー・リッツ法による弾性境界値問題の解法を演習問題6を通じて学ぶ。

9.2次元弾性体の有限要素法の定式化と演習① 
9.1 1次元弾性体の有限要素法を2次元問題に拡張するための定式化を行う。まず、三角形一次要素を使用する場合の形状関数とBマトリクスについて学ぶ。
9.2 三角形要素を用いた場合の要素剛性方程式を導出するとともに、重ね合わせの原理により、全体剛性方程式が導かれることを示す。

10.2次元弾性体の有限要素法の定式化と演習② 
10.1全体剛性方程式に境界条件を導入し、有限要素方程式を導く過程を説明する。
10.2 これまでの講義内容をまとめるとともに、次回以降のプログラミング演習のための準備をする。

11. Pythonプログラミング入門 
本講義で使用するサンプルプログラムは、2次元弾性体の有限要素法のためのプログラムであり、Python言語で作成されている。各自のPC上で自習できるように、Pythonを用いたプログラミングの環境構築、Pythonプログラムの記述方法、コンパイル方法、プログラムの実行方法について説明する。

12. サンプルプログラムの説明 
12.1 9.で定式化した2次元弾性体の有限要素法を計算するプログラムの使用方法を行う。また、要素分割、計算結果の可視化方法についても説明し、シミュレーションを行う一連の流れを修得する。
12.2 サンプルプログラムを用いた2次元弾性体の単軸変形の有限要素解析を行い、サンプルプログラムにおいて、これまで定式化した箇所がどのように計算されているかを説明する。

13.2次元弾性体の単軸変形の有限要素解析演習②
13.1 前回に引き続き、2次元弾性体の単軸変形の有限要素解析とその内容について説明する。
13.2 これまでの講義で学んだことを応用して、梁の曲げ及び円孔つき平板における応力集中の有限要素解析を各自で行う。また、得られた計算結果と材料力学で得られる解との比較を行う。

14.有限要素法の解析コンテストの準備 
受講者を複数のグループに分け、各グループで自由で独創的な問題を設定し、サンプルプログラムを用いた有限要素法の解析を行う。このとき、グループ内のメンバーで役割分担し、様々な条件(たとえば要素の種類、要素分割、物性値などを変更する)で解析を行い、次回のプレゼンテーションの準備をする。

15.有限要素法の解析コンテスト(プレゼンテーション) 
各グループで解析を行った問題についてのプレゼンテーションを行う。各プレゼンテーションを全員で採点評価する。
履修条件・関連項目
材料力学Ⅰ、材料力学Ⅱ、弾性力学を履修していることが望ましい。
本学の標準時間数(45時間/単位)に準ずる予習と復習を行うこと。
テキスト・教科書
教科書は、履修登録者に対して講義初回に配布(無料)する。
補助資料等は、講義前後にMoodle等を用いて配布配布する。
参考書
長岐滋、「Javaによるはじめての有限要素法」、コロナ社、(2010)
岡部朋永、「ベクトル解析からはじめる固体力学入門」、コロナ社、(2013)
冨田佳宏、「数値弾塑性力学-有限要素シミュレーション基礎と応用-」、養賢堂、(1990)
成績評価の方法
講義中に出題する、演習課題(40%)、課題レポート(40%)、解析コンテスト(20%)の得点によって総合的に評価する。
教員から一言
有限要素法は、いまや機械や建築物などあらゆる構造物の強度などを調べるための最も強力な数値シミュレーション法です。機械工学を学ぶ学生諸君には、是非受講することを勧めます。
キーワード
有限要素法、FEM、シミュレーション
オフィスアワー
特に設けないが、質問等は随時受け付ける。(事前に、メール等でアポイントメントを取ること。)
備考1
備考2
参照ホームページ
http://web.tuat.ac.jp/~yamanaka/
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2019/03/14 10:41:23