科目名[英文名]
エネルギー科学   [Energy Science]
区分 工学部専門科目等  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 34  開講時期 3学期 
授業形態 3学期  時間割番号 023612
責任教員 [ローマ字表記]
鳥居 寛之   [TORII Hiroyuki A.]
所属 工学府 研究室   メールアドレス

概要
福島第一原子力発電所の事故を契機として、我が国のエネルギー政策をどうすべきか、様々に議論されている。我が国ではほとんどの原発が停止し続けている状況で、火力発電をフル稼働して電力供給を賄っているが、限りある化石燃料の消費を控え、また世界的にも二酸化炭素排出による気候温暖化の影響を抑えるために、再生可能エネルギーに移行して持続可能な社会を構築する方向性が示されている。学期の前半では、様々なエネルギー源について、それぞれの特徴や課題について解説する。エネルギー工学や経済学的視点だけでなく、物理学的・化学的観点からアプローチしたい。後半では、原子核のエネルギーおよび放射線について講義する。放射線の基本的な性質から始めて、計測方法や人体への影響、環境汚染問題についても詳説する。その上で原子力利用の是非について考えてもらいたい。本科目は物理システム工学科のカリキュラムの中で,物理工学の関連する学際的な分野に関する講義として位置づけられる。また,本学では原子核・素粒子物理学の講義が他にないので、本講義はそれを補う意味合いもある。
本授業科目は非常勤講師の鳥居寛之が担当する。
到達基準
現代社会の発展に必要不可欠なエネルギーの利用について知識を身につけ、多角的に考える力を養う。
(1) 再生可能エネルギーを含む多種多様なエネルギーについて、その特長とそれぞれの課題を理解できている。
(2) 放射線および原子核エネルギーについて、物理学、生物学、環境科学の様々な視点から理解できている。
(3) エネルギー源およびエネルギー利用に、力学、電磁気学、熱力学、半導体、化学反応、放射線、原子核物理学といった複数の物理学・化学分野が関連し、様々なエネルギー形態が存在することを理解できているとともに、工学的な考察を加え、エネルギーの効率的な利用方法についても考えることができる。
ディプロマ・ポリシーの観点については履修案内のカリキュラムマップを参照してください。
授業内容
1. エネルギー科学概論:エネルギー工学と物理学、エネルギーの種類、エネルギー需給。
2. 化石燃料と火力:動力と発電、蒸気機関とガスタービン、石炭・石油・天然ガス・シェールガス。
3. CO2 と地球温暖化:地球のエネルギー収支、IPCC報告、燃料のエネルギーとCO2放出、二酸化炭素の回収貯留、バイオマス。
4. 太陽光:地球を育む太陽の恵み、太陽のエネルギーとスペクトル、太陽電池のしくみと太陽光発電、固定価格買取制度。
5. 風力・水力:風力発電、発送電問題、ダムと水力、小水力発電、海洋発電。
6. 熱機関とヒートポンプ:熱力学の応用。冷暖房の賢い利用法、エンタルピーとエクセルギー、地熱・太陽熱による発電や熱利用。
7. エネルギーの効率的利用:燃料電池と水素社会、コジェネレーションとコプロダクション、次世代自動車、電源構成とエネルギーの蓄積。エネルギー政策。
8. 放射線と放射能の基礎:放射線の種類、放射性崩壊、身の周りの自然放射線。
9. 放射線物理学・放射線化学:放射線と物質(原子・分子)との相互作用。荷電粒子の減速、光子の減衰、ラジカルの生成。
10. 放射線計測学・環境放射化学:放射線の単位と測定原理、空間線量率測定、土壌・食品検査、福島原発事故と環境汚染問題。
11. 放射線生物学・放射線防護学:放射線の細胞への影響、人体への影響、放射線医療、防護の考え方、リスクコミュニケーション。
12. 原子核物理学:原子核の構造と安定性、強い相互作用と弱い相互作用、中性子の性質と核分裂反応、加速器科学。
13. 原子力工学:原子力発電のしくみ、原子炉の種類、原子力事故、核燃料サイクル、高レベル放射性廃棄物処理問題。
14. 核融合:太陽エネルギーと人工の核融合、プラズマ物理学入門、核融合炉の構造と課題、ITER 計画、その他の核融合。
15. 期末試験 および 講義のまとめ
履修条件・関連項目
社会的な問題となっているエネルギー問題や放射線問題に関心があれば、特に予備知識を必要としないように講義する。
授業時間 30 時間に加え、配布した講義資料や参考書を参照し、本学の標準時間数に準ずる予習と復習を行うこと。
テキスト・教科書
参考書
後半の放射線および原子力に関しては、以下の書籍の内容に沿って講義する。授業はスライドを使うので、本がなくても分かるように進めるが、より深く理解するために、この書籍が役立つとお勧め。
「放射線を科学的に理解する」(初版第5刷〜7刷を推奨),鳥居寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎著,丸善出版。
講義前半の、再生可能エネルギーを含む様々なエネルギーについては、特に参考書を指定しない。巷にあるエネルギー関連の書籍を参考にするとよい。
成績評価の方法
出席および平常点 (28%)、レポート(36%)、期末試験(36%) で評価する。レポートは複数のテーマから幾つか選んで提出してもらう。
H29年度 成績分布:S 15%, A 23%, B 25%, C 25%, D 2%, E(履修放棄)11%.
教員から一言
スライドを使って、ブラッシュアップした講義を目指します。原発の再稼働や、太陽光発電の急速な普及、地球温暖化や放射性物質汚染といった環境問題など、ニュースにもよく取り上げられる時事的話題は、これからの社会を担う若者の皆さんが是非知っておくべきことがらです。世界の情勢も取り上げます。後半では、放射線をメインテーマに、原子核の世界を紹介します。ホットなトピックであるエネルギー問題を、工学的・科学的に考えていきましょう。他学科からも多数の聴講を歓迎します。皆さん是非受講して下さい。
キーワード
エネルギー、持続可能、再生可能エネルギー、政策、発電、火力、水力、太陽光、風力、地熱、原子力、核融合、燃料電池、水素、化石燃料、CO2、二酸化炭素、地球温暖化、熱機関、ヒートポンプ、エクセルギー、原子核、放射線、放射能、放射性物質、原発事故、環境汚染、低線量被曝、リスク、加速器、素粒子。
オフィスアワー
質問等は毎回の講義終了直後に受け付けます。または、torii-energy@radphys4.c.u-tokyo.ac.jp にメイルして下さい。
備考1
備考2
参照ホームページ
http://radphys4.c.u-tokyo.ac.jp/~torii/lecture/TUAT/
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2019/06/03 16:32:31