科目名[英文名]
健康長寿科学Ⅰ   [Science of Healthy Longevity I]
区分   選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 12  開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 05cc0005
責任教員 [ローマ字表記]
遠藤 昌吾, 柳井 修一, 堀田 晴美, 三浦 正巳, 石井 賢二, 村山 繁雄, 伊藤 雅史, 新開 省二, 西河 淳   [ENDOH Shogo, YANAI Shiyuichi, HOTTA Harumi, MIURA Masami, ISHII Kenji, MURAYAMA Shigeo, ITO Masashi, SHINKAI Shoji, NISHIKAWA Atsushi]
所属 農学部 研究室   メールアドレス

概要
老化は、遺伝子により付与される要因に加え、外部の要因によって大きく影響を受ける。外的要因がいかに生体に影響を与えうるかに関して、その諸相を分子、細胞、生体システムについて解説する。特に外的要因に対する高齢者の生体反応に関して、自然科学的側面のみならず、医学的(講師のうち5名は医師)、そして、社会科学的立場から考察を加え、抗加齢や健康長寿の源を探る。本講義は、東京都健康長寿医療センター研究所の遠藤昌吾先生はじめ7名の講師によって行われます。
到達基準
講師が述べる基礎的な用語、概念について理解すること。
講師が述べる各生命現象の老化による変化そして老化における役割を理解する。
老化における分子レベルから個体レベルまでの機能変化が生体にどのような影響を与えるのかを理解する。

昨年の環境老年学特論では、履修者の80%がA以上の評価。

本科目のディプロマ・ポリシーの観点:
本学HP三つのポリシーのカリキュラムマップを参照してください。
URL: https://www.tuat.ac.jp/campuslife_career/campuslife/policy/
授業内容
4月9日 柳井修一
「聞こえの問題」
一般に「年を取ると耳が遠くなる」と言われる聴力の低下は、高音領域を端緒として20歳代から始まる。老化に伴う聴力低下(難聴)には有効な改善手法が存在しないため、難聴を未然に防ぐための努力が重要である。音が聞こえる仕組みと耳科学的疾患、難聴の種類を紹介し、高齢者の聴力特性の理解を目指す。さらに、聴力が低下した高齢者に対する家族等の関わりかたを含め、高齢化社会における「聞こえの問題」について考える。

4月16日 新開省二(医師)
「老化の疫学」
疫学とは集団医学とも呼ばれ、大勢の人を対象にして様々な健康現象に関わる要因を探索する学問である。元気で長生きすることを健康長寿と呼ぶが、その健康長寿に係わる要因を解明することも疫学研究の重要な課題である。本項では、わが国における健康長寿の疫学研究から生まれた『健康長寿新ガイドライン』の重要なポイントを学ぶ。

4月23日 伊藤雅史(医師)
「機能食品、栄養、老化」
「野菜や果物を多く摂取する」ことが老化関連疾患の予防に効果があることはよく知られている。野菜や果物には二次代謝産物であるファイトケミカルが含まれており、多くが試験管内で抗酸化能を有することから、その効果には酸化ストレスの抑制が関与しているものと考えられてきたが、生体内でそのまま抗酸化物質として機能している可能性は低い。本講義では、ファイトケミカルの機能性を説明する分子メカニズムを概説する。

5月7日 堀田晴美
「痛み、自律神経」
高齢者における高血圧と一過性低血圧は、ふらつきや転倒、それによる骨折、さらには認知症の発生など、重篤な疾患の一因となります。また高齢者では夜間頻尿や、腰痛などの痛みも増えてきます。これらの症状には自律神経が密接に関わります。この講義では、「痛み」と「自律神経」について、基本的な生理学的しくみを学びます。また、それらの問題に対処するための物理療法の作用メカニズムについて最新の知見を紹介します。

5月14日 村山繁雄(医師)
「脳の老化の病理学」
神経細胞は原則として再生せず、発生の時期からの寿命を有する。老化により蛋白分解酵素サーベイランスが破綻し、異常蛋白蓄積が起きやすくなる。現在分かっているだけで、アミロイドβ蛋白、タウ蛋白、αシヌクレイン、TDP43等が知られており、異常立体構造をとり不溶化を獲得するプロセスが細胞障害を起こすこと、異常蛋白が神経回路網を通じ伝播する仮説が唱えられている。これらのプロセスは、合成化学創薬の対象となる。

5月21日 石井賢二(医師)
「脳の老化と認知症の画像診断」
脳は、生命維持の中枢であると同時に、人間の社会性や知的活動を生み出す重要な臓器である。健康な脳の加齢変化は、成熟と機能低下が混在する。近年話題となっている認知症の原因として、難溶性のタンパク蓄積が注目されている。この講義では、先進的脳画像診断技術(MRIやPET)を用いて、脳の加齢変化と、現在精力的に研究が進められている認知症の原因や根本治療薬(疾患修飾薬)開発について、最新の研究成果を概説する。

5月28日 三浦正巳(医師)
「パーキンソン病の発症メカニズム」
中枢神経に不可逆的損傷を受ける機会は、長く生きているほど増えるであろう。そのため、一度発達、成熟した神経機能にとって、加齢は危険因子といえる。特定の神経群が変性・脱落する神経変性疾患も、加齢により発症が増え、認知機能や運動機能に疾患特有の障害をもたらす。代表的な神経変性疾患であるパーキンソン病の病態生理や最近の進歩を取り上げ、環境要因や個人的要因も併せて、加齢と神経機能について考える。

6月4日 試験 遠藤昌吾
前週までの内容についての試験を行う。
試験後に、以下の内容について講義する。

「記憶と学習」
加齢に伴い、認知機能は30歳代から徐々に低下する。記憶は、他の認知機能の基盤となっていることから、その維持や改善は極めて重要な課題である。記憶の生化学的や細胞科学的そして行動科学的側面について述べつつ、老化に伴う記憶障害や記憶に影響を与える認知症などについて述べる。さらに、高齢化社会での認知機能、特に記憶の社会的な重要性とその維持・改善戦略について述べる。
履修条件・関連項目
基礎生物学、生化学、基礎生理学、基礎分子生物学、基礎物理化学を履修している事が望ましい。
テキスト・教科書
参考書
成績評価の方法
出席及び講義の最後に行われる試験により評価する。
教員から一言
老化に伴う様々な生理的変化等について、自然科学的な側面に加え、医学的な側面、そして、社会科学的な側面からも講義します。
キーワード
オフィスアワー
e-mail(sendo@tmig.or.jp)で問い合わせてください。
備考1
備考2
参照ホームページ
新開省二 https://www.tmghig.jp/research/team/shakaikagaku-fukushochou/ 伊藤雅史 https://www.tmghig.jp/research/team/roukakikou/saiboukinou/ 堀田晴美 http://www.tmghig.jp/J_TMIG/kenkyu/team/jiritsushinkei.html 村山繁雄 https://www.tmghig.jp/research/team/rounenbyorigaku/shinkeibyorigaku/ 石井賢二 https://www.tmghig.jp/research/team/shinkeigazou/petgazou-shindan/ 三浦正巳 https://www.tmghig.jp/research/team/roukanou-shinkeikagaku/shinkeikairokinou/ 柳井修一、遠藤昌吾 http://www2.tmig.or.jp/Mn_B/Japanese/index.html
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2019/03/28 9:49:34