科目名[英文名]
機械材料学特論   [Advanced Materials Engineering]
区分 前期課程科目  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次   開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 1060311
責任教員 [ローマ字表記]
高橋 徹   [TAKAHASHI Tohru]
所属 工学部 研究室 小金井6号館304室  メールアドレス

概要
機械材料学特論においては機械材料学分野に関係した基礎科目ならびに「機械材料学特論」の学習内容を踏まえ、さらに高度な材料工学の専門的知識を習得した上で、物質・プロセシングの両面から、より優れた性能、新奇な機能を持った材料の開発・解析に従事できるために必要となる研究能力を高めることを目的とする。高強度材料の「強さ」は巨視的な性質・性能であるが、これを支配するメカニズムを遡及すると原子間に働く結合力に至る。金属・セラミックス・ポリマー・複合材料の強度を高めるには、強さの原子論、ミクロ組織制御の原子論的原理、変形と強度を支配する転位論的メカニズムに関する理解を深めることが必要となる。先端的材料の開発研究、最新の材料プロセス、材料の設計・制御・開発のためのモデル化、強度と変形の支配方程式の構築、最新の解析手法、高性能化への新しいパラダイムの模索などへも視点を広げることを目的とする。第1〜4回では「高強度材料の機械的性質」、第5、6回では「ミクロ組織の解析手法」第7〜9回では「ミクロ組織の構築」、第10〜13回では「変形と強度の転位論」第14回以降では「金属間化合物の構造と物性」を中心に講義を展開する。
到達基準
1)機械システムにおいて構造材料として利用される金属材料を中心に、使用目的に適する材料を選択する方法の原理を理解しており、設計の条件に基づいて最適な材料を絞り込むことができる。
2)金属をはじめとする結晶固体において塑性変形をもたらす機構(すべり、双晶変形、クリープ、粒界すべり、変態誘起塑性など)について説明でき、変形条件(温度と応力の組合せなど)のもとで、支配的に活動するメカニズムを予測することができる。
3)結晶格子ならびに格子欠陥が転位のすべりに対して障害物として作用する際、各種の障害物が降伏強度にもたらす強化の程度を見積もることができる
4)転位を特徴付けるバーガースベクトル・方向ベクトルについて説明でき、単位のタイプごとに分類して、転位に伴う弾性ひずみ場・弾性応力場を計算できる
5)転位と転位の間の相互作用力、付加された応力のもとで転位の運動のために作用する力について説明できる
6)金属材料をはじめとする各種材料についてミクロ組織を特徴付けるために利用される観察法・分析法について理解し、説明できる
7)拡散型相変態・析出について相と構成の熱力学に基づいて説明できる
8)炭素鋼の状態図、変態図、熱処理(焼きなまし・焼きならし、焼入れ・焼き戻し)について説明できる
9)形状記憶合金における形状記憶効果と超弾性についてその熱弾性マルテンサイト変態に基づくメカニズムを説明できる。
10)様々な結晶格子から派生した規則構造を持つ金属間化合物について結晶幾何学的な分類を示すとともに規則構造から生じる変形と強度の特徴について説明することができる。
授業内容
第1回 【単相の結晶性媒質の機械的性質】すべりと格子回転,格子・転位・溶質原子からの抵抗,初期降伏応力,ひずみ硬化率,バウシンガー効果,変形集合組織 第2回 【固溶体硬化ならびに析出硬化】固溶体硬化の理論,転位のロッキング,運動転位に作用する固溶原子からの力,Portevin-Le Chatelier効果,転位とゾーン・析出粒子の相互作用 第3回 【多相合金の機械的性質】微小粒子・粗大粒子を含む合金,分散相を含む合金の高温変形,メカニカルアロイング 第4回 【拡散が生じる条件下での変形】クリープの関数形,固溶体合金のクリープ,定常クリープ,拡散流動,粒界すべり,超塑性 第5回 【表面の顕微法 定性と定量】 光学顕微鏡の分解能・焦点深度,明・暗視野・偏光照明,走査型電子顕微鏡,XMA,STEM,AFM,FIM,AP-FIM,FE-SEM 第6回 【透過型電子顕微鏡】 試料作製法,逆格子と回折パターン,ひずみ・転位のコントラスト,転位のバーガースベクトル,転位密度の測定,粒界・界面の構造,高分解能電顕 第7回 【ミクロ組織】 ミクロ組織の構成要素(点欠陥・転位・積層欠陥・結晶粒界・異相界面),界面エネルギーの減少による変化,Ostwald成長,ナノ構造 第8回 【拡散型固相変態】 自由エネルギー変化と駆動力,核生成の理論,不均一核生成,不連続析出 【無拡散相変態】 マルテンサイト変態が機械的性質に及ぼす影響,熱弾性型マルテンサイト変態と形状記憶効果・超弾性 第9回 【鋼の物理冶金学】 高強度低合金鋼の性質,超高強度鋼(マルエージ鋼・加工熱処理鋼),工具鋼 第10回 【転位】 転位の応力場,Peach-Koehlerの力,転位の相互作用,線張力,Peierls障壁,転位芯,ジョグ・キンク 第11回 【各種結晶構造における転位】 イオン結晶・非等方性媒質中の転位,六方晶・立方晶への応用 第12回 【転位の運動の律速過程】 拡散に律速された上昇,ジョグを持った転位の上昇,拡張転位の上昇,運動転位の運動に及ぼす固溶原子の効果,コットレル雰囲気のドラッグ 第13回 【結晶粒界・双晶の転位論】 結晶粒界の転位モデル,粒界の転位源,双晶変形の結晶学 第14回 【金属間化合物の構造】金属間化合物の定義,構造の名称・記号,規則化硬化,超転位,ドメイン 第15回 【金属間化合物の機械的性質】 超転位と面欠陥,L12型の規則構造をとるNi3Al金属間化合物の塑性変形,逆異相境界,規則構造における転位芯構造,降伏強さの異常温度依存性,NiAlの塑性変形,TiAlの塑性変形
履修条件・関連項目
工学部機械システム工学科における機械材料学分野関係の講義科目「機械材料学」「機械材料工学Ⅰ」「機械材料工学Ⅱ」、その他材料力学関係の科目等を履修していることを前提とするが、必須の条件とするものではない。
テキスト・教科書
テキスト・教科書として指定するものはない。講義の際に配布する資料を参考に、各自の知的好奇心を高め満足させる書物を渉猟して欲しい。
参考書
R. W. Cahn and P. Haasen, eds., "Physical Metallurgy", North-Holland, Elsevier Science 日本金属学会編、講座・現代の金属学 "材料強度の原子論" C. Barrett and T. B. Massalski, "Structure of Metals", Pergamon Press
成績評価の方法
定期試験を実施してはいない。複数回にわたり求める提出物から見られる専門的知識の理解度、課題レポートにおける取組と達成度をもとに総合的に評価する。
教員から一言
毎回の出席カードで出欠をチェックする。関連内容の資料を配布する予定。
キーワード
構造材料 強度 強化機構 転位論 ミクロ組織 組織制御 熱処理 新素材 軽量耐熱材料
オフィスアワー
授業実施日の第5時限の時間帯に教員室で質問等を受け付ける。
備考1
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
英語
更新日付
2020/01/27 20:29:31