科目名[英文名]
生態系管理学   [Ecosystem Management]
区分   選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 1  開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 01en1003
責任教員 [ローマ字表記]
多羅尾 光徳   [TARAO Mitsunori]
所属 農学部 研究室   メールアドレス

概要
 人は社会と自然のふたつの環境に支えられている。人の活動は社会を通じて自然に影響し,自然の変化は社会を通じて人に影響する。この視点なしに環境問題を論じても不毛である。環境問題が起きる原因と,その解決には何が必要かを考える視点を提供し,その科学的基礎となる生態系の構造と機能の基本を講ずる。
 本科目は実務経験のある教員による授業科目である。担当教員は独立行政法人 国際協力事業団(JICA)において派遣専門員および調査団員としての経験があり,授業ではそれらの実務において得た知見も交えた講義を行う。
において
到達基準
1. 生態系の構造と機能を理解できる。
2. 環境問題をもたらす原因を問う習慣を身につけることができる。
3. 環境問題を数量的にとらえる習慣を身につけることができる。
4. 以下のフレーズがどのシラバスにも一言一句違わず記載されていることに疑問を抱ける批判的精神を身につけることができる。

・ディプロマ・ポリシーの観点については,本学HP(三つのポリシー)のカリキュラムマップを参照してください.
https://www.tuat.ac.jp/campuslife_career/campuslife/policy/
授業内容
 以下の内容で順次,講義する。

第1回目・第2回目 環境問題をとらえる視点
 環境問題に関する簡単なアンケートを実施する.
 人は社会と自然のふたつの環境に支えられている。この視点なしに環境問題を考えても不毛である。「入会地の悲劇」と「汚染者負担の原則」をキーワードに,環境問題が起こる原因と,解決のために何が必要かを考える視点を提供する。

第3回目 生態系学と生態学
 生態学は生態系を扱う学問分野であると一般には認識されているようである。そして,生態学は環境問題を扱う学問分野であるとも認識されているようである。しかしながら,生態学を生物学の一分野とするならば,この認識は誤りである。生物学の一分野である生態学が対象とするのは種個体群であり,生態系ではない。また,環境問題は人間社会の問題であるので生物学である生態学が扱う対象ではない。生態系を扱う学問分野は生態系学とし,環境科学の一分野とすることが適切であることを,生態学と生態系概念の発展の歴史的経過をもとに論ずる。

第4回目 生態系の構造と機能(1) 自然生態系の姿
 生態系はさまざまな姿をしているが,すべての生態系には共通した姿がある。自然生態系を例に生態系の基本的な姿を概観する。生態系の構造に影響を及ぼす環境要因について概説する。

第5回目 生態系の構造と機能(2) 有機物の生産と分解
 生態系では独立栄養生物によって有機物が生産され,従属栄養生物が分解する。生態系における有機物の生産と分解についての基本的な概念を押さえる。

第6回目 生態系の構造と機能(3) 生態遷移・農耕地生態系
 生態系の種構成や生物量は時間とともに変化する。生態系の遷移を人為的に停止させて生態系の見かけの光合成速度を高く維持しているのが農耕地であることを説明する。

第7回目 生態系の構造と機能(4) 都市生態系・区画モデル
 都市も生態系のひとつとみなすことができる。しかし,都市は自然生態系や農耕地など,他の生態系の存在なしに持続することはできない。地球人70億の半数が都市に居住している今日,都市を持続させるために生態系をどのように管理すべきかを論ずる。

第8回目・第9回目 食料生産と生態系保全
 世界の75億の人口を支えるための食料を得るためには,陸地面積の約1割を占める農耕地は不可欠である。増え続ける人口を養うために,人類の生存を支えている自然生態系を破壊して農耕地を拡大しなければならないジレンマに陥っている。自然生態系の保全と食料生産は両立可能だろうか? それとも,飢餓や栄養不足に苦しめられる人々が存在することは避けられないのだろうか? 自然科学と社会科学の両方の視点からこの問題を考える。

第10回目 水の循環と治水・利水
 治水と利水は相矛盾する。両者を両立させるには水循環を上手に制御すること,とりわけ都市においては雨水を地下に浸透させ,地下水を利用することが要であることを論ずる。

第11回目 水の汚染と浄化
 水の汚染の原因と,汚染の指標を説明する.汚染された水を浄化するための手法と原理を説明する.

第12回目 ごみ問題
 ごみが減らない理由は,商品をつくるメーカがごみの処理費用を負担しない仕組みとなっているからである。「拡大生産者責任」にもとづき,メーカがごみの処理費用を負担する仕組みに変えれば,ごみの量は劇的に減ることを論ずる.

第13回目・第14回目 エネルギーの生産・消費と生態系保全
 人が社会の中で生存するにはエネルギーは不可欠である。エネルギーを得て消費することには,自然生態系の破壊,二酸化炭素の排出,放射性廃棄物の生成など,多かれ少なかれリスクを伴う。リスクを可能な限り抑え,人の生存を持続可能とするには,エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの劇的な普及が要であることを論ずる。

第15回目 授業のまとめ
履修条件・関連項目
・環境問題について我々は何をすべきか,どのような展望・問題があるのかを常に問い,議論する姿勢を求める。
・Moodleから配布資料・投影資料をあらかじめダウンロードし,宿題を済ませてから授業にのぞむこと。宿題は予習・復習を兼ねており,宿題をやっておくと授業の理解が深まる内容になっている。
・毎回の授業の最後に質問票の提出を求める。質問票にはその時間の講義の内容に関する質問とその質問の説明を200字程度で書く。質問への回答は次の授業までに moodle にアップロードしておく。質問の内容(着眼点など)と質問の成立度合い(質問として成り立っているか)を評価する。
・生態学と地球化学を受講することが望ましい。
・本学の標準時間数に準ずる.
テキスト・教科書
Moodleにアップした配布資料・投影資料
参考書
瀬戸昌之「持続社会への環境論」有斐閣,2009. ISBN 978-4641173606
岩渕孝「『有限な地球』で 人口・食料・資源・環境」新日本出版社,2010. ISBN 978-4406053464
E.P. Odum, The strategy of ecosystem development, Science 064:262-270.
G. Hardin, Tragedy of Commons, Science 162:1243-1248.
成績評価の方法
質問票:宿題:試験 = 3:3:4
受講者数が少ない場合は試験をリポートに替える場合がある。
教員から一言
常に「問う」姿勢を求める。教員の言うことや教科書に書かれていることをうのみにせず,授業に批判的にのぞんでほしい
キーワード
「問う」心,生態系,物質循環,生態効率,汚染者負担の原則,生態系サービス,区画モデル,入会地の悲劇
オフィスアワー
オフィスアワー:平日10時から12時まで
備考1
他の授業や出張などの理由により,休講にする場合がある。休講分の授業は金曜3時限目(環境資源科学科1年次生は空きコマ)に補う。すなわち,金曜3時限目と4時限目に連続して授業を行うことがあることを意味する。
備考2
過去の成績分布は以下の通り。

2019年度 (57):S 9%, A 25%, B 26%, C 18%, D 23%
2018年度 (29):S 31%, A 48%, B 7%, C 3%, D 10%
2017年度 (12):S 17%, A 58%, B17%, C 0%, D 8%
2015年度(1年次対象)(9):S 78%, A 22%, B 0%, C 0%, D 0%
2015年度(2年次対象)(25):S 24%, A 16%, B 16%, C 28%, D 16%
2014年度(15):S 7%, A 53%, B 20%, C 0%, D 20%
2013年度(45):S 11%, A 11%, B 16%, C 20%, D 42%
2012年度(41):S 12%, A 17%, B 29%, C 20%, D 22%
2011年度(50):S 10%, A 12%, B 28%, C 20%, D 30%
2010年度は未開講(カリキュラム変更により2年次の授業となったため)
2009年度(69):S 14%, A 17%, B 32%, C 19%, D 17%
2008年度(74):S 10%, A 27%, B 32%, C 16%, D 14%

カッコ内の数字は履修登録者数(他大学の履修生も含む)。
Dは履修放棄者を含む。
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2020/03/31 16:27:54