科目名[英文名]
流体力学Ⅰ   [Hydrodynamics]
区分 工学部専門科目  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 24  開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 022569
責任教員 [ローマ字表記]
田川 義之   [TAGAWA Yoshiyuki]
所属 グローバルイノベーション研究院 研究室   メールアドレス

概要
流体力学は,気体や液体の流れ(flow)や波(wave)を取り扱う物理学の一分野です.一見複雑そうに見える流体現象を,少ない数理モデルで表現することを目指して発達してきた学問です.本科目では,流体運動の「保存則」(質量,運動量,エネルギー),流体に働く「力」(圧力,粘性力,重力)の性質と数理モデルを詳しく説明します.また,流れの具体例として「円管内の流れ」を取り上げ,流れの特徴と実用的な関係式を示します.
本講義は学科カリキュラムの専門基礎科目に該当します.
到達基準
流体力学は,大学で初めて出会う物理学です.したがって,本科目では,皆さんに流体現象の特徴を理解してもらうことを第一の目標とします.特に,機械系技術者・研究者の必須知識である,連続の式(質量保存則),ベルヌーイの式(力学的エネルギー保存則,圧力と流速との関係を表す),レイノルズ数(相似則),層流と乱流の違い,について,(1) 内容を完璧に理解し,(2) 取り上げる流れの例を適切に表す数理モデルの導出ができ,(3) 簡単な実用計算ができる,ようになることを目指します.
本科目のディプロマ・ポリシーの観点:履修案内のカリキュラムマップを参照してください.
授業内容
第1回 オリエンテーション
 流体力学がかかわるさまざまな分野の紹介,授業の進め方の説明を行います.「教員より一言」の項も参照してください.
第2回 流体とは何か? (教科書「第1章」)
 流体の状態・運動を表す諸量を定義します.
 通常の流体力学は,非常に多くの分子が「連続して存在する」状態を対象にしています.
 巨視的な流体の状態を表す重要な物理量には「密度」,「粘度」,「温度」が,流体の運動にかかわる物理量には「速度ベクトル」(加速度ベクトル),「圧力」,「重力加速度」が用いられます.
第3回 質量保存則(1) (教科書「第5章 5.1節」)
 「水は方円に従う」「行く川の流れは絶えずして,しかももとの水にあらず」これらの有名な俚諺は,流れの力学的な特徴を良く表しています.このような性質を持つ流体の質量保存則を導くために用いる「検査体積」の概念を詳しく説明します.
第4回 質量保存則(2) (教科書「第4章 4.1,4.2節」)
 質量保存則の一般式(積分形,微分形)を示します.
 管内流を例に「流量」(単位時間に単位面積の断面を通る流体の体積)の概念と,「流量」保存則を示します.
 これによって,例えば,ホースの口を絞ると,なぜ,水が遠くまで飛ばせるのか,といったことが理解できます.
第5回 流体に働く力(教科書「第1章 1.2,1.3節,第2章 2.1節」)
 「質量力」(重力)と「表面力」(圧力,粘性力),粘性力の性質を示します.
 「粘性」は,流体のせん断変形に対する抵抗を意味する言葉です.水や空気の流れでは,通常,その抵抗の大きさは,流れの中に生じる「速度勾配」に比例します.この性質を「ニュートンの粘性法則」と呼んでいます.
第6回 静止流体の力学(教科書「第3章 3.1,3.3節」)
 「重力」と「圧力」による力との釣り合いをもとに,静止流体中に働く圧力「静水圧」を定式化します.それをもとに,液柱式圧力計(マノメータ)の原理,浮力(アルキメデス)のメカニズムを示します.
第7回 運動量保存則(教科書「第5章 5.2節」
 運動量保存則の一般式を示します.つぎに,「定常流」(時間的に不変の流れ,数理モデルの表記法は授業で説明)について,流体運動によって物体に働く力(「流体力」)を,運動量保存則から計算する方法を説明します.
 これによって,例えば,曲げたホースが手を離すとまっすぐになろうとするのはなぜか,といったことが理解できます.
第8回 第1回-第7回のまとめ
 中間試験.第1回目から第9回目までの内容から出題します.
第9回 角運動量保存則(教科書「第5章 5.3節」
 流体を使う機械の多く(スプリンクラー,遠心ポンプなど)は,流体の回転をエネルギーに変換する機構を用いています.ここでは,一般的角運動量保存則と,その適用例を示します.
第10回 ベルヌーイの式と応用(1)(教科書「第4章 4.3節」)
 「ベルヌーイの式」は,流れの「力学的エネルギー保存則」を指します.より普遍的な流体に対するエネルギー保存則からベルヌーイの式を導き,物理的な意味を詳しく説明します.
第11回 ベルヌーイの式と応用(2)(教科書「第4章 4.4節」)
 さまざまな機器(ピトー管(速度計),ベンチュリ管(流量計),タンクからの水の放出(トリチェリの定理))の圧力と流速との関係を定式化します.
第12回 ベルヌーイの式と応用(3)
 問題演習
第13回 管内流と圧力損失(1)(教科書「第6章 6.1,6.2節」)
 流体と管壁との「摩擦」や「はく離」(流れが物体に沿わなくなる現象)による「圧力損失」を定式化します.また,流れの2形態「層流」と「乱流」,異なる大きさ・流速の流れ場を関係付ける相似則(「レイノルズ数」)を学びます.
第14回 管内流と圧力損失(2)(教科書「第6章 6.3節」)
 層流と乱流における「管摩擦損失」の違いと,理論式,実用関係式を示します.つぎに,管摩擦以外の損失要因(「管出入口損失」,「急拡大・急縮小損失」)のメカニズムと実用関係式を示します.
第15回 全体のまとめ
 期末試験.後半(中間試験以降)の内容を主にしつつ,前半の内容についても問う問題を出します.
履修条件・関連項目
特になし.ただし,高校,大学初級レベルの物理学の知識があることを前提に講義を進める.
流体力学は「連続体力学」の一種である.「固体力学」(弾性力学),「熱力学」,「伝熱学」とは密接な関係がある.
本学の標準時間数に準ずる予習と復習を行うこと.
テキスト・教科書
講義の配布プリントを中心に進める.
参考書
杉山・新井・遠藤「流体力学」(森北出版),藤川・武田・矢野・村井「工学の基礎 流体力学」(培風館),巽友正「流体力学」(培風館)JSMEテキストシリーズ「流体力学」(日本機械学会)など
成績評価の方法
中間試験(30点), 期末試験 (50点),宿題・演習点(合計20点)の合計点が60点以上のものを合格とする.出席のみによる加点は行わない.
オンライン教育における成績評価方法は、すべての出席を前提とし、課題、オンラインテスト等を総合的に評価し、本学が定める標準的な学修時間に相当する学修効果が認められる場合に単位を付与する。評価の割合は以下の通り。平常点および課題 70%,期末テスト 30%。総合評価により以下の 基準で単位を付与する。S: 90 点以上、A:80 点以上 90 点未満、B:70 点以上 80 点未満、C:60 点以上 70 点未満。
教員から一言
流体力学は,機械工学(エネルギー機械(タービン,水車,ポンプ)や航空機)だけではなく,化学,地球科学,医学など,幅広い学問分野で用いられる基礎物理学の一つです.流体力学を通じて,他の自然科学への関心も深めてください.
キーワード
連続の式,静水圧,ベルヌーイの式,圧力損失,レイノルズ数
オフィスアワー
平日昼休み(12時-13時),質問はオフィスアワーに直接受け付ける.
備考1
過去の成績分布は以下のとおり.
(H31) 受講者123 名,S 20 名,A 31 名,B 39 名,C 20 名,D 13 名(途中放棄3 名含む)
(H30) 受講者 139名,S 18名,A 32名,B 41名,C 32名,D 16名(途中放棄4名含む)
(H29) 受講者147名,S 17名,A 43名,B 39名,C 27名,D 21名(途中放棄4名含む)
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2020/07/12 8:06:15