科目名[英文名]
健康長寿科学Ⅰ   [Science of Healthy Longevity I]
区分   選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 1  開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 05lc0105
責任教員 [ローマ字表記]
西河 淳, 内田 さえ, 遠藤 昌吾, 柳井 修一, 堀田 晴美, 石渡 俊行, 石井 賢二, 北村 明彦, 豊原 潤   [NISHIKAWA Atsushi, UCHIDA Sae, ENDOH Shogo, YANAI Shiyuichi, HOTTA Harumi, ISHIWATA Toshiyuki, ISHII Kenji, KITAMURA Akihiko, TOYOHARA Jiyun]
所属 農学部 研究室   メールアドレス

概要
老化は、遺伝子により付与される要因に加え、外部の要因によって大きく影響を受ける。外的要因がいかに生体に影響を与えうるかに関して、その諸相を分子、細胞、生体システムについて解説する。特に外的要因に対する高齢者の生体反応に関して、自然科学的側面のみならず、医学的、そして、社会科学的立場から考察を加え、抗加齢や健康長寿の源を探る。本講義は、東京都健康長寿医療センター研究所の7名の講師によって行われます。

到達基準
講師が述べる基礎的な用語、概念について理解出来るようになる。
講師が述べる各生命現象の老化による変化そして老化における役割が理解出来るようになる。
老化における分子レベルから個体レベルまでの機能変化が生体にどのような影響を与えるのかが理解出来るようになる。
昨年の環境老年学特論では、履修者の80%がA以上の評価。
本科目のディプロマ・ポリシーの観点:
本学HP三つのポリシーのカリキュラムマップを参照してください。
URL: https://www.tuat.ac.jp/campuslife_career/campuslife/policy/
授業内容
① 豊原 潤「脳内環境の維持と疾患」 (講義予定 6月2日)
 これまで脳神経科学は神経細胞の解析を中心に行われてきましたが、近年、脇役と考えられていたグリア細胞や神経細胞と周囲の細胞との相互作用によって維持される脳内環境の維持が神経細胞の健全性にとって重要であると認識されるようになりました。本講義ではこれら細胞間の相互作用の解析に不可欠な分子イメージングの手法について概説し、脳内環境の維持と老化および疾患の関係について紹介する。

② 柳井修一「聞こえの問題」(講義予定 6月9日)
 一般に「年を取ると耳が遠くなる」と言われる聴力の低下は、高音領域を端緒として20歳代から始まる。老化に伴う聴力低下(難聴)には有効な改善手法が存在しないため、難聴を未然に防ぐための努力が重要である。まず、我々が音を含む刺激をどのように受け取り、反応しているかを解説する。その後、音が聞こえる仕組みと耳科学的疾患、難聴の種類を紹介し、高齢者の聴力特性の理解を目指す。さらに、聴力が低下した高齢者に対する家族等の関わりかたを含め、高齢化社会における「聞こえの問題」について考える。

③ 北村明彦「介護予防の観点からみた健康リスク評価」 (講義予定 6月16日)
 近年、わが国では介護予防の観点から高齢者の健康リスク評価が注目されてきた。高齢者の場合は、疾病や身体的健康度のみならず機能的健康度を加味した総合的評価が重要となる。その機能的健康度の低下した状態が「フレイル」である。フレイルとは、「加齢とともに心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態」という概念である。以上について解説する。

④ 遠藤昌吾「高齢者の高次神経機能」 (講義予定 6月23日)
 人間らしさとなって現れる脳の高次神経機能は、思考、判断、創造、言語、記憶などを含み、高齢に伴って低下する。しかし、すべての高次神経機能が一様に低下するわけではなく、機能によって異なる特徴がある。超高齢社会における高次神経機能の社会的な重要性とその維持・改善戦略について述べる。

⑤ 堀田晴美「痛み、自律神経」 (講義予定 6月30日)
 高齢者における高血圧と一過性低血圧は、ふらつきや転倒、それによる骨折、さらには認知症の発生など、重篤な疾患の一因となります。また高齢者では夜間頻尿や、腰痛などの痛みも増えてきます。これらの症状には自律神経が密接に関わります。この講義では、「痛み」と「自律神経」について、基本的な生理学的しくみを学びます。また、それらの問題に対処するための物理療法の作用メカニズムについて最新の知見を紹介します。

⑥ 石渡俊行「加齢とがん」 (講義予定 7月7日)
 がんは40年近く、日本人の死因の第一位を占めており、その大部分は高齢者に発症する。高齢者のがんの発症には、遺伝子異常の蓄積や不完全なDNA修復、染色体末端にあるテロメア長の短縮による染色体の不安定性などが関与していると考えられている。この講義では、高齢者がんの発症機序、増殖動態、他の臓器やリンパ節への転移機序と、代表的な高齢者がんである前立腺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がんなどの特徴について概説する。

⑦ 石井賢二「脳の老化と認知症の画像診断」 (講義予定 7月14日)
 脳は、生命維持の中枢であると同時に、人間の社会性や知的活動を生み出す重要な臓器である。健康な脳の加齢変化は、成熟と機能低下が混在する。近年話題となっている認知症の原因として、難溶性のタンパク蓄積が注目されている。この講義では、先進的脳画像診断技術(MRIやPET)を用いて、脳の加齢変化と、現在精力的に研究が進められている認知症の原因や根本治療薬(疾患修飾薬)開発について、最新の研究成果を概説する。

⑧ 内田さえ「試験」 (試験予定 7月21日)
前週までの内容についての試験を行う。

履修条件・関連項目
基礎生物学、生化学、基礎生理学、基礎分子生物学、基礎物理化学を履修している事が望ましい。本学の標準時間数に準ずる時間で、予習・復習(授業外学習)をすること。
テキスト・教科書
必要に応じて講義毎にプリント配布。
参考書
・驚異の小器官 耳の科学(杉浦 彩子著、ブルーバックス)
・健康長寿新ガイドラインエビデンスブック.東京都健康長寿医療センター研究所、健康長寿新ガイドライン策定委員会編・著(社会保険出版社、東京、2017年)
・標準生理学 第9版(医学書院)
・ワインバーグがんの生物学(南江堂)
・脳内環境辞典(メディカルドゥ)
成績評価の方法
講義への取り組み(計10%)及び講義の最後に行われる試験(計90%)により評価する。
教員から一言
老化に伴う様々な生理的変化等について、自然科学的な側面に加え、医学的な側面、そして、社会科学的な側面からも講義します。
キーワード
老化、聴覚、健康リスク評価、高次神経機能、痛み、自律神経、がん、認知症、脳画像診断、脳内環境
オフィスアワー
e-mail(suchida@tmig.or.jp)で問い合わせてください。
備考1
講義予定日は、順序の入れ替えや変更がある場合があります。掲示板等で確認してください。
備考2
柳井修一 http://www2.tmig.or.jp/Mn_B/Japanese/index.html
北村明彦 https://www.tmghig.jp/research/team/shakaisanka-chiikihoken/healthy-aging/
遠藤昌吾 http://www2.tmig.or.jp/Mn_B/Japanese/index.html
堀田晴美 https://www.tmghig.jp/research/team/roukanou-shinkeikagaku/jiritsushinkei/
石渡俊行 https://www.tmghig.jp/research/team/rounenbyorigaku/
石井賢二 https://www.tmghig.jp/research/team/shinkeigazou/petgazou-shindan/
豊原 潤 https://www.tmghig.jp/research/team/shinkeigazou/petyakuzaikagaku/
内田さえ https://www.tmghig.jp/research/team/roukanou-shinkeikagaku/jiritsushinkei/
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2020/04/20 18:23:42