科目名[英文名]
技術企業経営戦略論   [Strategy and Management of Technology Corporations]
区分 専門職学位課程科目  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次   開講時期 3学期 
授業形態 3学期  時間割番号 1060812
責任教員 [ローマ字表記]
林田 英樹   [HAYASHIDA Hideki]
所属 工学府 研究室   メールアドレス

概要
【初めに】本講義は、大学で教える2種類の学問(理論学問と実践学問)の中で、実践学問として経営学の分野の経営戦略論の講義を行います。実践学問では、理論知識だけでなく、実践知識も重要とします。実践学問としての経営学には、戦略、財務、会計、マーケティング、組織等に関する理論知識が存在しています。一方、理論だけでは尽くせない現実の企業経営に必要な知識も必要となります。どのように戦略を立案し、不確実な状況下で判断・意思決定し、目的達成への具体的行動をいかに実現していくか、という現実に則した極めて具体的な実践的知識です。実践学問においては、理論学問が目指す問題を理解し分析することだけでは、不十分です。その問題を何らかの具体的な形で解決する行動が必ず求められます。つまり、理論知識を用いることで、理解し、分析し、その上で、実践知識の活用によって実行することになります。

【講義形式】国内外のビジネススクールで行われているケースメソッド法による講義形式。ケースと呼ばれる、実際の会社でおきた経営の出来事を物語り的に記述したものを使い、ケースから考えられる経営課題を洞察し、その問題への意思決定と解決への責任を果たそうとすることがケースメソッドでのゴールとなります。そのために、講義参加者が様々な意見を出し合うディスカッションが必要となります。
ケースディスカッション後には、正解はありません。なぜなら、ケースと似た問題が生じることはあるけれど、全く同じ問題が生じる事はないからです。 つまり、経営問題には、数学と違って唯一最終の正解というのは有りません。参加者自身が各自、ディスカッションを通じて自ら構築したものが各自の正解となります。

【講義プロセス:3つのステップ】 個人予習・グループ討議、クラスディスカッション3つがあります。
①個人予習:個人予習では、、ケースを読み、何が書いてあり、どのような状況で、何が問題になりそうなのかということを自分なりに判断し、自分ならどうするという実行案を考える。 受講生は、自分自身を登場人物の立場におき、自分に意思決定が迫られていると考えながらケースを読んでください。当然、ケースには完全な情報は記載されていない。実際の経営の場面では、完全な情報を入手して意思決定をすることはあり得ないことを理解してください。
②グループ討議:学生のみでのインフォーマルなグループ討議を行ってください。 このグループは、講義で行うグループ発表のメンバーと同じで、半年間変更はありません。講義参加学生のみで議論することの意味は、とにかく声を出して自分の意見を言うという練習になるからです。そうすることで、自分の考えていることと、他の参加者が考えていることを知ることが出来ます。
①、②は毎回の講義開始前までに終了しておくこと。
③-1 戦略論に関する講義
③-2 全体討議:受講生全員がクラスでディスカッションを行います。グループ討議以上に参加者の多様性が増し、様々な意見を出し合うことが新たな検討課題の発見になります。この全体討議を通じて、自らの意思決定の再検討を行い、自分で判断し行動を提案するという思考実験を絶えず行う事になります。

つまり、個人予習→インフォーマルグループ討議→講義+クラスディスカッション
を講義の回数行う事になります。

【ケースレポート】
 ケースレポートの提出が3回あります。
【グループ発表】
 ケースについて、グループ発表を3回行います。3人から5人のグループでの発表となります。
 インフォーマルなグループ討議もこのグループで行う事を推奨します。

経営戦略は企業戦略と事業戦略に区別される一方で、機能別に細分化されます。技術戦略はその一部であり、製造業等にあっては持続的な競争優位の確立と維持の点で最優先される戦略です。技術戦略は、技術開発及びその利用に関する企業の姿勢であり、かつ、技術の影響力はビジネスプロセス全体に関係するので、単に技術開発レベルではなく、広い視野で考える必要があります。

本コースは、経営戦略の理論的背景に焦点を当て、戦略、競争優位、比較優位、収穫逓増(規模・範囲の経済、ネットワーク外部性等)などの理論的概念について解説し、それらを実際のケースに適用することで実際の戦略分析・立案においてどのように関連してくるのか、様々な企業のケースを使い、経営戦略、事業戦略、技術戦略等を講義とディスカッションを通じて学んでいきます。
例えば、創出された技術が事業として結実していくためには、技術を着実に企業価値へ変換する経営戦略と整合性を持った技術戦略を必要とし、その構築と実施をどのように行うかが課題となります。

経営戦略には正解はなく、さまざまな戦略理論は実務に対する問題提起にすぎません。それらを正確に理解することは大切ですが、それはあくまでも参考程度にとどめておくことが肝要です。そのうえで最終的には、受講生一人ひとりが意思決定の基軸を独自に確立することが大切です。本講義の最終的な目的は、そのためのヒントを与えることにあります。

到達基準
知識・理解の観点
・経営戦略論と技術戦略の関連性に関して説明できる。
・技術戦略と環境分析の関係を理解し、環境分析が出来る。
・技術戦略の構築と実施プロセス関して、理解し、説明できる。
・技術戦略の評価と展開に関して理解して、説明が出来る。
思考・判断の観点
・経営戦略、技術戦略の知識、フレームワークを使用して、現実のビジネスにおける、経営戦略、技術戦略上の課題、問題点を多面的に分析して、説明できる。
関心・意欲の観点
・技術戦略の知識、フレームワークを適応して、企業または組織が直面している技術戦略上の課題、問題点を分析して、解決策を提案できる。
態度の観点
・クラス討論への目的意識と論理性を持った発言。
技能・表現の観点
・技術戦略の基本的知識、ツール、フレームワークを適切に、効果的に報告書や発言に取り入れることが出来る。
履修案内のカリキュラムマップを参考にして下さい。
授業内容
1)経営戦略と企業環境に関わる課題を理解した上で、技術戦略の構築と実施に関して、必要な知識、フレームワーク、ツール等々をケーススタディーと関連付けながら解説し、議論します。
経営戦略と技術戦略:競争優位性の確立と維持に関する技術戦略技術戦略と環境分析:将来の不確実な事業環境を分析し、技術戦略の対象課題を明確にする。
技術戦略の構築と実施:対象課題に対して技術戦略を構築して実施する。
技術戦略の評価:技術戦略を様々な観点で評価する。
技術戦略の展開:技術戦略を様々な方法で展開する。

2)講義を通じて取得した知識、フレームワーク、ツール等を基本として、ケースとして取り上げる企業が抱えている技術戦略上の課題、諸問題を取り上げて分析、議論し、解決方法を探ります。

1)経営戦略と企業環境に関わる課題を理解した上で、技術戦略の構築と実施に関して、必要な知識、フレームワーク、ツール等々をケーススタディーと関連付けながら解説し、議論します。
経営戦略と技術戦略:競争優位性の確立と維持に関する技術戦略技術戦略と環境分析:将来の不確実な事業環境を分析し、技術戦略の対象課題を明確にする。
戦略の構築と実施:対象課題に対して技術戦略を構築して実施する。
戦略の評価:技術戦略を様々な観点で評価する。
戦略の展開:技術戦略を様々な方法で展開する。

2)講義を通じて取得した知識、フレームワーク、ツール等を基本として、ケースとして取り上げる企業が抱えている技術戦略上の課題、諸問題を取り上げて分析、議論し、解決方法を探ります。


    10/03  休講 
  
第01回 10/10  ガイダンス、授業の進め方     [キーワード]経営戦略、事業戦略、技術戦略      ケース分析:ママスクエア
第02回 10/17  技術経営の基礎理論(1)      [キーワード]価値創造                ケース分析:ANKER
第03回 10/17  技術経営の基礎理論(2)      [キーワード]競争ドメイン、バリューチェーン     ケース分析:花王
第04回 10/24  技術戦略(1)            [キーワード]経営戦略と技術戦略、技術ロードマップ  ケース分析:日本ゼオン
第05回 10/31  技術戦略(2)            [キーワード]知財、アライアンス           ケース分析:東レ  
第06回 11/07  ケースグループ発表                グループ発表:コマツ
         ケースレポート提出               ケースレポート:日本ゼオン
第07回 11/14   新規事業創出戦略(1)     [キーワード]オープンイノベーション        ケース分析:東洋紡
    11/21  休講 
第08回 11/28  新規事業創出戦略(2)     [キーワード]資産配分プロセス            ケース分析:ネクスト・ユニーク 
        ケースレポート提出                ケースレポート:未定
第09回 12/05  新規事業創出戦略 (3)      [キーワード]ビジネスモデル、プラットフォーム    ケース分析:アップル
第10回 12/05   技術マーケティング戦略      [キーワード]ダイナミックケイパビリティ       ケース分析:BASF
(Guest Speaker: Dr.Masayuki Hirosue, BASF SE. Global Marketing and Product Development Automotive Fluids - Fuel and Lubricant Solutions)      
第11回 12/12  技術マーケティング戦略      [キーワード]コアコンピタンス、RBV         ケース分析:パイロット            
第12回 12/19  ケースグループ発表               ケースグループ発表:小林製薬
第13回 12/26  研究開発プロジェクトマネジメント [キーワード]ステージゲート              ケース分析:JSR
第14回 01/09  M&Aとコーポレートベンチャリング [キーワード]ベンチャー、CVC             ケース分析 JT
         ケースレポート提出               ケースレポート:JSR
第15回 01/23  ケースグループ発表  [キーワード]技術経営全体のまとめ 
                   ケースグループ発表:日立ハイテクノロジーズ
履修条件・関連項目
授業時間30時間に加えて本学の標準時間数に準ずる予習・復習を行うこと。
毎回ビジネスケースを用いたクラス討論を中心に授業を進めます。従って、ケース分析の事前準備と討論への参加が必須です。
テキスト・教科書
教科書は使用しません。ケース教材は事前に配布します。
毎回の講義には事前課題図書・文献(必読)と参考資料があります。必読図書・文献は事前に読んでいることを前提に講義を行います。
必読図書・文献で書かれた内容はあくまでも授業の前提知識という位置づけになります。
講義ではこの前提知識をもとに独自に問題を設定し、受講者とともに解のない問いについて議論を深めていきた いと思っています。
各週に事前に読んで準備しておく課題図書の分量がかなりありますのでこのシラバスを読んだらできるだけ早いタイミングで予習の貯金をしておくことを強くお勧めします。
参考書
 本講義は実務やケース分析にとって有益だと考えられる主要な概念や理論モデルは取り上げる予定ですが、学説史や戦略ツールの体系的なレビューを直接の目的とするものではありません。これらに関心のある方々はミンツバーグ著(2012)『戦略サファリ 第二版』(東洋経済新報社)を参照してください。


講義を受講する際の参考図書リストです。
<参考図書>
新しい経営学 三谷宏治著 ディスカバー・トゥエンティーワン 2019
マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則 ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳) ダイヤモンド社; エッセンシャル版  2001/12/14
[新版]競争戦略論I, II マイケル E.ポーター (著), 竹内 弘高 (翻訳), DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 2018/7/19
戦略経営論 ガース・サローナ他、石倉洋子訳 東洋経済新報社 2002年
戦略サファリ ヘンリーミンツバーグ著 齋藤嘉則監修 東洋経済新報社 2012 
成功する日本企業には「共通する本質」がある 菊澤研宗 朝日出版 2019
起業の科学 田所雅之 日経B  2017
経営分析入門 大津広一著 ダイヤモンド社 2013
ストーリーとしての競争戦略 楠木建著 東洋経済新報社 2010
ビジョナリーカンパニー ジェームズ・C・コリンズ著 山岡洋一訳 日経BP出版センター 1995
オープンイノベーション ヘンリー・チェスブロウ他著、長尾高弘訳 英治出版  2008
新版ブルー・オーシャン チャン・キム著 入山章栄訳 ダイヤモンド社 2015
ステージゲート法 クーパー著、英治出版 2012
JTのM&A 新貝康司著 日経BP社 2015
アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略 NTT出版 2015/3/12
ANKER爆発的成長を続ける新時代のメーカー 松村太郎 マイナビ出版 2020
成績評価の方法
成績評価基準:(1)クラス討論(授業内での発言・参加度)50% (2)レポート(中間2回、期末1回、合計3回)25% (3)グループ発表3回 25%を目安とします。
レポート評価基準: (1)授業内容理解度、(2)考察力、(3)実践応用力、(4)論述力、(5)作成努力

【オンライン教育における成績評価方法と評価基準】
オンライン教育における成績評価方法は、すべての出席を前提とし、双方向性
を利用した学習意欲、小テストおよび課題、オンラインテスト等を総合的に評価
し、本学が定める標準的な学修時間に相当する学修効果が認められる場合に単
位を付与します。評価の割合は以下の通りです。平常点50%、課題およびレポート(中間2回、期末1回の合計3回)25%およびオンライングループ発表25%で評価します。
総合評価により以下の基準で単位を付与します。S: 90 点以上、A:80 点以上90 点未満、B:70 点以上80 点未満、C:60 点以上70 点未満。
欠席が4回以上ある場合、レポートの提出が一つでも欠けた場合、の何れかに該当する場合は評価しない。
教員から一言
人は若き日に心に抱いた人物像へと近づいていくものだと思います。「夢は決して捨てずに。努力は少しも惜しまずに。」その日が必ずくることを信じ続けることが重要だと思います。
キーワード
オフィスアワー
随時受け付けます。 予めメール等で連絡下さい → hideki-hayashida@go.tuat.ac.jp
備考1
本講義は、間違いなく産業技術専攻で一番時間・労力が必要な講義です。
しかし、新卒学生、社会人学生が年齢、職種、業界を越えて、多くの時間を共有し、ディスカッションできる講義でもあります。
毎年、最終回のグループ発表では、当講義を履修した卒業生が何人も参観に来られます。
観るだけでなく、今のそれぞれの立場から質問やコメントをしていただいています。
それだけ、思い入れのある講義だと言うことです。
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2020/08/13 11:20:09