科目名[英文名]
応用化学実験Ⅱ   [Experiments in Applied ChemistryⅡ]
区分 工学部専門科目  選択必修   単位数 3 
対象学科等   対象年次 24  開講時期 3学期 
授業形態 3学期  時間割番号 022389
責任教員 [ローマ字表記]
遠藤 理   [ENDO Osamu]
所属 工学部 研究室   メールアドレス

概要
【目的】応用化学実験IIは、応用化学科で開講される実験科目(I-VI)の内、有機化学に関連した実験実習を行う。

【概要】 
 応用化学科で開講される実験科目(I-VI)の内、応用化学実験IIでは、有機化学に関連した合成実験実習ならびに高分子物性実験を行う。有機化合物の変換に関する基礎的な内容、ならびに高分子化合物の高次構造や物性評価に関する実験を行い、レポートを作成する。これらの実習を通して、有機化学実験を行う際に必要な多くの基本操作について学び、有機化学および高分子化学の講義にて習得した内容の理解を深める。また、危険物や毒劇物の性質・取扱法・法規制に関する講義を行い、法令を遵守し安全に実験を行うために必要な知識と理解を深める。

本科目のクラスコード ike53s2
到達基準
私達の日常生活には、多くの有機化学物質が用いられている。これらの物質の中には天然から得られるものもあるが、それらの大部分は有機化学の知識をもとに、人工的に合成されたものである。これらの物質を合成する際に必要な実験装置の扱い方、ガラス器具を用いた実験操作方法、試薬や生成物の取扱い方、合成法および化合物の性質の調べ方などを各自の実習経験を通して身につけることができる。
また、高分子は他の材料に無い様々の特性から日常生活に欠かせない材料となっている。高分子物性実験実習を通して、これらの性質と高分子の高次構造が密接に関わっていることを理解出来るようになる。回折や屈折、散乱といった光の性質を理解し、物性を評価するための熱力学的、光学的な測定手法を習得できる。
本科目のディプロマ・ポリシーの観点: 履修案内のカリキュラムマップを参照してください。
授業内容
クラスをC1とC2の2クラスに分け、一方のクラスは有機化学実験を行ったあと高分子物性実験を行う。 他方のクラスは、先に高分子物性実験を行ったあと有機化学の合成実験を行う。

有機化学実験

第1回 ガイダンス: 有機化学実験を行うために必要な注意事項を確認し、実験器具を準備する。

第2回 実験講義: 実験試薬、溶媒(危険物、毒劇物)などの分類・管理・取扱い法について解説する。実験で使用する試薬を規則に即して分類し、それぞれの試薬に関する知識を深める。

第3回 還元反応―べンジルアルコールの合成―: べンズアルデヒドを水素化ホウ素ナトリウムにより還元し、ベンジルアルコールを合成する。代表的な還元反応、アルコールの定性的な確認方法について学ぶ。 分液・抽出操作、融点の測定法、常圧蒸留操作を習得する。

第4回 酸化反応―シクロヘキサノンの合成―: シクロヘキサノールの次亜塩素酸ナトリウム酸化により、シクロヘキサノンを合成する。代表的な酸化反応であるアルコールの酸化反応、カルボニル化合物の定性的な確認方法について学ぶ。水蒸気蒸留操作、およびガスクロマトグラフィーによる生成物の分析法を身につける。

第5回 スピロピランの合成: 紫外光や可視光の照射により構造が変化し、それに伴って色が変化する(この現象をフォトクロミズムと称する)化合物であるスピロピランを合成し、フォトクロミズムの溶媒依存性や反応速度の解析を行う。

第6回 カルボニル縮合反応―ジベンザルアセトンの合成―:ベンズアルデヒドとアセトンを塩基存在下で脱水縮合させ、ジベンザルアセトンを合成する。この実験を通してアルドール反応についての理解を深める。再結晶の概念と実際の操作法について学ぶ。

第7回 ベンゾイン縮合―ベンゾインの合成―: ベンズアルデヒドにチアミンを作用させ、ベンゾインを合成する。この実験を通して、極性転換によるアシルアニオン中間体を経る芳香族アルデヒドの2量化反応の理解を深め、TLCによる反応進行の確認方法を身につける。

高分子物性実験

第1回 ガイダンス: 高分子物性実験を行うために必要な注意事項について説明し、確認する。

第2回 高分子の熱的性質: 高分子を含めた物質について、温度によって変化する物性を理解し、相転移の概念を学ぶ。高分子の融解、結晶化、ガラス転移、液晶分子の相転移に伴う熱の出入りを示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。

第3回 光学基礎: 光の屈折、回折現象を理解する。種々の物質の屈折率を測定し、光と物質の相互作用について学ぶ。レーザー光の取り扱い法に習熟する。プリズムによる分光、回折格子による回折を観察し、屈折率が波長に依存することや、光の波長と回折格子の格子定数の関係を理解する。また屈折率と分子構造の関係を学ぶ。

第4回 高分子溶液による光散乱: ポリスチレンのコロイド溶液の散乱強度をゴニオ型光散乱装置で測定し、散乱強度の角度依存から高分子溶液の濃度ゆらぎと光の散乱強度の関係を理解する。

第5回 回折: 円形スリットによるHe-Neレーザー光の回折像を観察し、スリットサイズと回折像との関係について考察する。また、髪の毛による光の回折を測定し、髪の毛の太さと回折模様の関係を理解する。

第6回 高分子の光学的性質: 高分子材料の異方性の重要さを理解するとともに、偏光を用いた光学測定の基礎として、複屈折現象と分子配向の評価法および球晶や液晶の光学組織の観察法を習得する。また、偏光顕微鏡の取り扱い法を学ぶ。

第7回 様々なプラスチックの特性: 日常生活で利用する様々なプラスチック材料をそれぞれの性質に応じて分別することで特性を理解する。ホットプレート、ピンセット、ビーカー、鉛筆、アセトンを利用して未知のプラスチック試験片を分別する実験を計画し、その方法に従って各材料の同定を行う。

尚、授業の進行状況に応じて、授業内容を修正する可能性があリます。
履修条件・関連項目
実験実習を行うにあたっては、安全確保の観点からも予習は必須である。各人は実験テキストを精読し内容の十分な理解を図ると共に、実験手順のフローチャートを作成し、試薬の物理的・化学的性質を事前に調べ、実験ノートに記載しておく(15時間)。
実験終了後には、実験レポートの作成を行う。所定の書式に従い、目的、実験操作、結果、考察、結論、参考文献を適切に記述し、決められた期日内に提出すること (30時間)。
授業時間90時間と上記の授業外学習を加え、本学の標準時間数に準ずる予習・復習を行うこと。
学習内容は、本学の標準時間数に準じている。
その他
1)「学生教育研究災害傷害保険」に加入していること。
2) 安全規則(白衣、上履き用運動靴、保護メガネ、名札の着用など)を遵守する。詳細はガイダンスで説明する。
テキスト・教科書
東京農工大学応用化学科編「実験テキスト」とプリントを使用する。
参考書
ブルース著「有機化学 上・下」 第7版、化学同人編集部 編「実験を安全に行うために」、「続実験を安全に行うために」
大津元一著「光科学への招待」、高分子学会編「基礎高分子科学」
成績評価の方法
成績評価方法はすべての出席を前提とし、学習意欲、小テスト・課題・レポート等を総合的に評価し、本学が定める標準的な学修時間に相当する学修効果が認められる場合に単位を付与します。評価の割合は以下の通りです。

平常点 (毎回)50%:実験への取り組み・参加度、履修態度、予習の充実度、実験手技の習熟度などを評価する。
レポート 点(小テスト・課題などを含む)(毎回)50%:提出状況、充実度(実験内容を正しく理解し、実験結果を正確に報告でき、更に結果について適切に考察できていること)を評価する。

以上を総合的に評価し、以下の 基準で単位を付与します。S: 90 点以上、A:80 点以上 90 点未満、B:70 点以上 80 点未満、C:60 点以上 70 点未満。

ガイダンス、講義、実験は全日出席が原則である。遅刻、無断欠席、レポートの提出遅延や未提出、実験中の怠慢行為により、単位の取得が困難になることもある。

2020年度に新規開講される科目であるため成績分布は2021年度より公表予定である。
教員から一言
(1) 本格的に有機化学実験を経験する諸君のために、本科目では、危険の少ない操作方法を採用した。それでもガラス器具による切り傷、やけど、火災などの不慮の事故か?起こる可能性がある。このような事故を未然に防ぐため、実験を始める前にテキストを精読し、教員からの助言に従い、注意深く実験を行うように努めること。また、長袖白衣、運動靴、保護メガネを常用し、安全に 留意する。 光学実験ではレーザー光を使用するため、その性質を事前に十分理解したうえで実験に臨むこと。特に目の安全を確保することに留意されたい。
(2) 有機化学における代表的な反応様式を学習する。実験前に、実験内容を十分に予習しておくことが必要である。
キーワード
有機化学、物質変換、実験操作、抽出、再結晶 高分子科学、相転移、光の屈折、回折、散乱
オフィスアワー
随時対応する。教員の連絡先は、ガイダンス資料を参照すること。
備考1
1) レポート締切日時: 原則として指定日の午前8時40分
2) 出欠点呼: 13時開始

備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2021/09/27 9:15:10