科目名[英文名]
量子技術概論   [Introduction to quantum technologies]
区分 工学部専門科目  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次 34  開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 023256
責任教員 [ローマ字表記]
生嶋 健司   [IKUSHIMA Kenji]
所属 工学部 研究室   メールアドレス

概要
人類の世界観(古典論=局所的実在論)を覆し、ミクロな世界を理解するための新しい概念を記述する“量子論”。この理論体系の“不可思議さ”は今なお先端科学における興味の対象である一方、量子論が与えるその不可思議な予言は情報処理やセンシングなど、次世代の革新的技術につながろうとしている。本講義では、(A)量子論の基本的仮定と理論的枠組み、(B)古典的描像では全く説明できない量子現象の例と計算方法、(C)MRIや生体センシング、そして将来の量子技術(量子演算等)、について解説する。
到達基準
(1)量子論の基本的仮定や理論枠組みを理解し、説明できること。
(2)量子力学の数学的背景を理解し、それを扱うことができること。
(3)具体的なモデルを近似して計算できること。

本科目のディプロマ・ポリシーの観点:履修案内のカリキュラムマップを参照してください。
授業内容
第1回 はじめに
授業の進め方。
古典的世界観の破綻。
古典論の基本的仮定と枠組み(局所実在論)

第2回 量子論の基本的仮定と枠組みI
状態、物理量とは
複素ヒルベルト空間

第3回 量子論の基本的仮定と枠組みII
測定とは
量子状態のベクトル表現
物理量の行列表現

第4回 Stern-Gerlachの実験で量子論を考えてみよう
スピン演算子
離散固有値と連続固有値

第5回 無限自由度系。位置空間における運動量
並進対称性と運動量
波動関数とブラケット表示

第6回 量子ダイナミクス
演算子の時間発展、シュレーディンガー方程式
シュレーディンガー描像とハイゼンベルグ描像

第7回 量子干渉
純量子効果

第8回 近似法:時間に依存しない場合の摂動論
“摂動”という概念。
縮退が無い場合

第9回 近似法:時間に依存しない場合の摂動論
縮退が有る場合

第10回 近似法:時間に依存する場合の摂動論

第11回 近似法:時間に依存する場合の摂動論
相互作用表示

第12回 2状態問題(核磁気共鳴、メーザー、レーザー)

第13回 既存の量子技術:MRI

第14回 将来の量子技術:量子情報処理、センシング

第15回 まとめ
履修条件・関連項目
「力学」「工学基礎数学」「工学応用数学」「電磁気学応用」「波動物理」を履修していること。量子論の基礎から解説するため、必須ではないが「量子力学」を履修していることが望ましい。

授業時間30時間とレポート課題の授業外学習時間に加え、授業で配布する教材や後述の参考書を使って本学の標準時間数に準ずる予習・復習を行うこと。
テキスト・教科書
特に指定しませんが、「現代の量子力学 J. J. Sakurai著」をベースに量子論の枠組みと数学的背景を説明します。“ブラケット表示”の説明が書かれた教科書を1冊は所有してください。
参考書
現代の量子力学 J. J. Sakurai著
新版 量子論の基礎 清水明著
量子力学 畠山温著
量子力学 砂川重信著
ーーー
NMRの書 荒田洋治著
量子コンピュータが本当にわかる 武田俊太郎著
みんなの量子コンピュータ Chris Bernhardt著
成績評価の方法
授業内小テストとレポート課題の合計点で評価します。
教員から一言
量子論は古典論とは数学的扱いはもとより、哲学さえ異なります。量子論によると、我々の世界(宇宙)は局所実在論(物体は観測せずとも存在し、その物理情報が光の速度を超えて伝達されることはない)という、物理学の根本原理と思われていた前提が破られうることを示しています。本講義で量子論の真髄の一端に触れたいと思います。

量子技術は近い将来、様々な分野に広がることが期待され、米国では大手IT企業などと組んで、中高生の段階から次世代テクノロジーの量子技術に触れる人材「量子ネーティブ」の育成を始めています。バイオ・医療系分野にも今後、益々関わってくると思います。一般教養として学んでおこうという学生と将来量子技術に関わりたい学生の両方に満足してもらえる講義を目指します。
キーワード
量子力学、複素ベクトル空間、スピン、摂動論
オフィスアワー
Classroom, emailによる質問可。
備考1
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2021/03/23 12:50:38