科目名[英文名] | |||||
動物病理学総論 [General Veterinary Pathology] | |||||
区分 | 選択必修 | 単位数 | 2 | ||
対象学科等 | 対象年次 | 3~ | 開講時期 | 1学期 | |
授業形態 | 1学期 | 時間割番号 | 01VN3211 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
渋谷 淳, 吉田 敏則 [SHIBUTANI Makoto, YOSHIDA Toshinori] | |||||
所属 | 農学部 | 研究室 | メールアドレス |
概要 |
種々の動物に発生する各種病的変化は、形態学的立場から系統的に、循環障害、退行性変化、進行性変化、炎症、腫瘍および奇形と大きく分類されている。これら通則化された項目について病因を念頭に入れつつ、それらの病変がどのような機序で発現するかを形態学的な領域のみならず、生化学、生理学、分子生物学的な領域も含めて論じる。本科目は、実務経験のある教員による授業科目である。担当教員は毒性病理学分野において、毒性試験での病理診断の経験があり、授業では病変の実例を交えた解説をする。 |
到達基準 |
本科目のディプロマ・ポリシーの観点: 本学HP(三つのポリシー)のカリキュラムマップを参照してください。 https://www.tuat.ac.jp/campuslife_career/campuslife/policy/ 動物病理学総論では、産業動物、伴侶動物、実験動物に発生する種々の疾患や腫瘍がどのような病理形態学的変化から形成されているかを解析するために必要な基本的知識を理解するとともに、その診断に必要な病理用語を習得できるようにする。 1. 病理学の歴史的変遷、診断病理学と実験病理学の関係を理解する。 2. 病変の基本的構成成分である細胞の構造と機能の概略と細胞傷害が生じる細胞内過程を理解する。 3. 細胞傷害の形態的変化、物質代謝異常、細胞死、組織壊死、老化、封入体形成と死後変化を理解する。 4. 細胞の萎縮、肥大と増生、化生、異形成を理解する。 5. 細胞増殖のメカニズム、幹細胞、細胞外マトリックス、再生、創傷治癒、線維化、瘢痕形成を理解する。 6. 血液循環障害、水腫、ショックを理解する。 7. 炎症の概念、炎症における組織変化、炎症のメディエーター、急性炎症と慢性炎症、炎症の命名法と形態学的種類を理解する。 8. 免疫系と免疫応答、サイトカインネットワーク、アレルギー、移植免疫とMHC、自己免疫病、免疫不全症候群を理解する。 9. 腫瘍の定義、分類と命名、腫瘍学で用いられている特殊な用語、肉眼的に見た腫瘍の形と性状、組織学的にみた良性腫瘍と悪性腫瘍、転移、腫瘍の宿主への影響、腫瘍免疫、腫瘍の成因を理解する。 10. 発生異常の原因、奇形の発生様式、奇形の種類を理解する。 |
授業内容 |
次の授業内容について講義する。授業期間の間に中間試験(第1回目から第6回目の内容)と期末試験(第7回から第15回目の内容)を実施する。 1. 病理学の歴史と概念(教科書第1章、1-6頁):病理学の歴史的変遷、病因、病理学の概念について;細胞の基本構造と機能および細胞傷害のメカニズム(教科書第2章、7-17頁):正常細胞の構造と機能、細胞傷害の原因、傷害プロセスの原則と生化学的メカニズム、主な細胞傷害因子について(疾患の内因、外因、主因と誘因の関係、病理学の方法論、診断病理学と実験病理学の関係;細胞傷害のプロセスとそのメカニズムを十分理解することが必要である)。 2. 細胞及び組織の傷害と死①(教科書第3章、21-36頁):細胞傷害の形態的変化、物質代謝異常について(細胞傷害に基づく変性性変化は、細胞・組織の基本的な病理変化であり、その病変の種類を十分理解することが必要である)。 3. 細胞及び組織の傷害と死②(教科書第3章、37-55頁):物質代謝異常の続き、細胞死、組織壊死、老化について(細胞死と組織壊死は、細胞・組織の基本的な病理変化であり、その病変の種類を十分理解することが必要である)。 4. 細胞及び組織の傷害と死③(教科書第3章、55-62頁):封入体形成と死後変化;細胞の適応と分化異常(教科書第4章、63-67頁):萎縮、肥大と増生、化生、異形成について(萎縮、肥大と増生、化生、異形性は、ストレスや刺激に対する細胞傷害や細胞応答であるので、それらの特徴を十分理解することが必要である)。 5. 細胞の増殖と分化およびその異常(教科書第5章、69-90頁):細胞増殖のメカニズム、幹細胞、細胞外マトリックス、再生、創傷治癒、線維化、瘢痕形成について(組織の再生の例、創傷治癒過程と線維化に導かれる過程の理解は、臨床像の理解の要である)。 6. 第1回から第5回目までの講義内容のまとめ、中間試験。 7. 循環障害(教科書第6章、91-110頁):血液循環障害、水腫、ショックについて(充血・うっ血・副側循環・出血・血栓症・塞栓症・梗塞・水腫などは病変の広がりを理解する上で重要であり、そのためには正常な血液・リンパ循環を正しく理解している必要がある)。 8. 炎症①(教科書第7章、113-134頁):炎症の概念、炎症における組織変化、炎症のメディエーターについて(炎症は、生体が受けた損傷に対する総合的な反応性変化であり、病理学総論の要である)。 9. 炎症②(教科書第7章、135-154頁):急性炎症と慢性炎症、炎症の命名法と形態学的分類、炎症の全身的影響について(急性炎症と慢性炎症の炎症像の違いと、その形態学的分類の理解は、炎症性疾患の成因の理解に重要である。炎症の全身的影響の理解は、個体の予後判定に重要である)。 10. 免疫病理①(教科書第8章、155-167頁):免疫系と免疫応答について(免疫担当細胞の役割を包括的に理解することが重要である)。 11. 免疫病理②(教科書第8章、167-181頁):サイトカインネットワーク、アレルギー、移植免疫とMHC、自己免疫病、免疫不全症候群について(免疫反応のメディエーターであるサイトカインの役割、アレルギーの種類、生体防御反応としての免疫反応とその破綻の機序の理解は重要である)。 12. 腫瘍①(教科書第9章、185-196頁):腫瘍の定義、分類と命名、腫瘍学で用いられている特殊な用語、肉眼的に見た腫瘍の形と性状、組織学的にみた良性腫瘍と悪性腫瘍、転移について(腫瘍学で用いられている用語の理解、良性と悪性の鑑別に関する理解は、臨床腫瘍学にも重要である)。 13. 腫瘍②(教科書第9章、196-218頁):腫瘍の宿主への影響、腫瘍免疫、腫瘍の成因について(腫瘍が発生する機序の理解は必要である。高齢化する伴侶動物では腫瘍がもっとも多く発生するので、病理学の中でも重要な領域である)。 14. 染色体、遺伝子及び発生の異常(教科書第10章、225-234頁):原因、奇形の発生様式、奇形の分類について(遺伝子や染色体の異常から、細胞レベル、器官レベル、個体レベルでの異常に導かれる関係は重要である)。 15. 第7回から第14回目までの講義内容のまとめ、期末試験。 |
履修条件・関連項目 |
細胞生物学、遺伝学、獣医解剖学、獣医組織学、獣医生理学、獣医生化学、獣医微生物学、免疫学を履修しておくこと。授業時間15時間に加え、配布した講義資料や教科書、参考書などを参照し、事前事後学習を行うこと。 |
テキスト・教科書 |
「日本獣医病理学会編:動物病理学総論 第3版 文永堂出版」を教科書として使用する。その他、必要に応じてプリントを配布する。 |
参考書 |
「日本獣医病理学会編:動物病理カラーアトラス 第2版 文永堂出版」には具体的な病変の組織写真が掲載されているので、病変の特徴を理解するには良い参考書である。その他、Pathologic Basis of Veterinary Disease(James F. Zachary編、第6版 Elsevier出版)は解説が詳細で、掲載写真やイラストも豊富であるため、専門的な理解を進める上で良い参考書である。 |
成績評価の方法 |
中間と期末の定期試験の点数で成績評価を行う。出席点は成績に加味しないが、中間試験の範囲までの授業と、中間試験後から期末試験までの範囲の授業で、それぞれ3回以上欠席した場合には、試験を受ける資格を失う。それぞれの試験で60点に達しなかった場合、1回のみ追試を行う。 配点割合、評価のポイント、実施時期は以下の通りとする。 中間試験50%:第6回目に、第1回から第5回目までの講義内容に関する知識、理解度について試験を実施し、総合的に評価する。 期末試験50%:第15回目に、第7回から第14回目までの講義内容に関する知識、理解度について試験を実施し、総合的に評価する。 |
教員から一言 |
病理学は獣医師国家試験科目の一部である。病理学は、基礎と臨床の中間に位置しており、病変を理解するためには、まず、解剖学、組織学、免疫学、微生物学などの知識を習得しておく必要がある。この病理学を習得していないと、外科学や内科学などの臨床分野への応用が困難となる。 |
キーワード |
形態病理学、解剖病理学、組織病理学、免疫病理学、腫瘍病理学 |
オフィスアワー |
13:00〜18:30(教員室に在室中はいつでも歓迎します。) |
備考1 |
連絡可能なメールアドレス mshibuta@cc.tuat.ac.jp |
備考2 |
参照ホームページ |
https://tat-lvp.amebaownd.com |
開講言語 |
日本語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2022/01/17 8:20:22 |