科目名[英文名] | |||||
天然物有機化学 [Natural Compound Organic Chemistry] | |||||
区分 | 選択必修 | 単位数 | 2 | ||
対象学科等 | 対象年次 | 4~ | 開講時期 | 3学期 | |
授業形態 | 3学期 | 時間割番号 | 01an4050 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
川出 洋 [KAWAIDE Hiroshi] | |||||
所属 | 農学部 | 研究室 | メールアドレス |
概要 |
天然有機化合物の生合成と生理活性、生物活性を考察する。動植物および微生物の生体内で化学物質である“天然物”が作られる化学反応経路である「生合成経路」の代表的なパターンを学んでもらいたいと考えています。 生理活性を有する天然低分子有機化合物の生合成と受容、情報伝達・生理活性発現の一連のプロセスを、天然物化学的な思考から学んでいきましょう。最近の欧米で新しい概念として定着してきている、ケミカルバイオロジー(化学生物学)的な視点からも学べるように教授します。これらを通して,より広く科学的思考能力と表現力=説明能力を身につけるとはどういうことかを考えてもらい、今後の科学的な活動に活かしてもらえればよろしいかと考えます。 応用や実用化だけを思考するのではなく,生命現象の根本原理を深く考える基礎的な学問として捉えてください。 |
到達基準 |
複雑な天然有機化合物が簡単なユニットから構築される“生合成”を学び、「化学構造から生合成経路を考察できる基礎力」を身につける。生物の生理現象を低分子の生理活性分子を介して理解できる。たとえば、①バイオアッセイやゲノムマイニングによる生理活性物質の探索法;②生理活性天然有機化合物の生合成研究;③未解明のホルモン(新しい生理活性物質)研究アプローチ等,天然有機化合物に関するさまざまな興味をどのように捉え、興味から自身で課題・テーマを設定するという力を身につけてもらいたいと考えています。課題を設定したら,文献検索と文献読解などにより深く掘り下げ,科学的な根拠に基づいた試験問題の作題とその解説ができるような能力を身に付けることで本講義の目標を達成できたと評価したいと考えます。これを標準到達基準とします。 本科目のディプロマ・ポリシーの観点:本学HP(三つのポリシー)のカリキュラムマップを参照してください。 https://www.tuat.ac.jp/campuslife_career/campuslife/policy/ |
授業内容 |
内容は「生合成」と「生物活性」の大きく2つに分かれ、それぞれいくつかのカテゴリーをもとに構成する。適宜実例等を交えて知識を具現化し、より高度な概念構築につなげるようにします。 初回は概説を行い、第2回以降は各項目を[2]〜[6]までの単元を各2〜3回に分けて解説するが、関連する事項は項目に関わらず随時、項目を超えて解説する。知識を実用化する思考について考察したいと考えています。 I. 生合成と天然物 1.生理活性物質の探索と生合成の概要 生理活性物質研究で重要なバイオアッセイの重要性について解説する。 2.脂肪酸、ポリケチド、シキミ酸 脂肪酸の生合成経路、これにより得られるポリケチドから得られる芳香族系天然物とマクロライド、ポリエン系化合物の生合成や作用を紹介する。またシキミ酸経路とポリケチド経由の芳香族系天然物を対比する。 3.テルペノイド、ステロイド、アルカロイド テルペン・ステロイド系の天然物は、植物性天然物の代表といっても過言ではないほど、古くから盛んに研究されてきた。テルペンはイソプレン骨格を単位として生合成される。ステロイドの代表であるコレステロールは、トリテルペンから生合成される。テルペン・ステロイド系の生合成を学ぶ。 II. 天然物と生物活性 4.植物の内因性生理活性物質 植物ホルモンは農学系における代表的な内因性の生理活性物質であり、受容体と結合して微量で作用する。これらの構造と受容のメカニズムを解説する。 5.菌類等の生理機能調節物質 糸状菌や放線菌の生産する生理活性物質や微生物ホルモンとして作用する物質について紹介する。 6.天然物と抗生物質(機能抑制物質) 抗生物質の構造と作用機作について、簡単な分類と解説を加える。 |
履修条件・関連項目 |
予習復習の出来る人が受講すべきです。また,講義開始時に出席表を配布します。そこに質問や疑問点,自ら学修をしようと気付いた点などを記載して提出できる積極性を履修条件と考えています。 関連科目として、有機化学、生物化学、分子生物学、遺伝子工学、植物生理学などが理解を助けてくれるでしょう。幅広い視点で生理活性物質を見ることが可能となります.化学が得意な学生も生物が得意な学生も,知的好奇心を満たせる内容を目指しています。 必要な学習時間は、本学の標準時間数に準ずる。もちろん,それを超える自学自修は大歓迎です。 |
テキスト・教科書 |
生物有機化学―第2版ー(長澤寛道・著)東京化学同人(2019年6月発刊) (生協から教科書を購入できるように手配・発注しています。) |
参考書 |
浅見忠男・柿本辰男編 新しい植物ホルモンの科学(第3版) 講談社2016年発行 →植物ホルモン科学の決定版 生理活性物質を生合成とその生合成反応を触媒する酵素の視点でまとめられた意欲的な教科書 「基礎から学ぶ植物代謝生化学」 水谷正治ほか編(羊土社,2018年発行,ISBN-10: 4758120900) 天然物化学・生物有機化学I(北川勲,磯部稔・著)朝倉化学大系13 朝倉書店(2008年) →理学・薬学系の天然物有機化学の教科書として有益な情報を含んでいます。 |
成績評価の方法 |
最終試験で評価したいと思います。 ただし,毎時出席票を配布しますので,それに質問や疑問点・気付きなどがあれば積極的に記載してください。優れた質問や考察などには,講義の中で紹介をして説明をしたいと思います。そのような話題を提供してくれた受講生には,成績評価で1段階繰り上げ(A評価をS評価,B評価をA評価にする)を考慮します。 |
教員から一言 |
天然物有機化学は生物の生活環・成長制御に関わる化学物質をつなぐ分野で、農学・理学・薬学等の分野でさまざまな視点から研究されてきた学問大系です。天然有機化合物の名前や構造,生理活性をすべて覚えることには大きな意義は無いと考えています。英語の辞書に収載されているすべての単語を何も考えずに覚えるのと同じです。天然有機化合物や天然生理活性物質の構造を見た時に,これはどのような経路や反応を経て制合成されるのか,生理活性物質がどのようなメカニズムで受容され,生理機能を示すのか?を代表的な化合物を例にとりあげて解説していきます。教科書を読んでわかるところは自学自修できるので,教科書の内容に関連して教科書に書かれていない最新のトピックスを交えて講義をする予定です。 |
キーワード |
天然物化学、有機化学、生理活性物質、生合成 |
オフィスアワー |
メイルにてお寄せください。 |
備考1 |
備考2 |
参照ホームページ |
開講言語 |
日本語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2022/09/28 11:28:30 |