科目名[英文名]
工業技術標準概論   [Industrial Technology Standards]
区分 専門職学位課程科目  選択必修   単位数 2 
対象学科等   対象年次   開講時期 1学期 
授業形態 1学期  時間割番号 1060808
責任教員 [ローマ字表記]
岡本 秀樹, 山田 浩史   [OKAMOTO Hideki, YAMADA Hiroshi]
所属 工学府 研究室   メールアドレス

概要
【目的】
「標準」は日常のそこかしこにあふれている。例えば、トイレットペーパーの芯のサイズ、USBコネクタの形状、パソコンのキーボード配列などである。さらには、研究に使う材料や機器から工場で使う設備にいたるまで数多くの標準が利用されている。標準は、さまざまな場面で我々に便利さを提供してくれているのである。このような標準をうまく使うことで、さまざまな仕事や作業を効率良くこなせるだけでなく、高いパフォーマンスを出すことが可能となる。本講義では、標準の役目を理解し、標準の使い方を学ぶことが目的である。
【講義概要】
本講義においては、講義内容を参考にしつつ各自の研究テーマの成果を製品化するという思考実験を通して、標準の重要性や必要性を理解し,標準の利用方法を学んでいく。具体的には、下記の到達基準に示した事項について思考実験の中で段階的に考察を行う。その考察結果を積み上げながら、最終的にレポートとして完成させる。また、授業の段階ごとに、各自、思考実験に対する考察について3分程度のプレゼンテーションを行い、他の学生と意見交換を行う。

到達基準
思考実験で想定する製品やサービスを利用者の求めるものに仕上げ、利用者が安心して利用できるようにするため、標準に関する下記の重要性と必要性を理解し、説明できるようになること。
① 提供する価値とその価値を提供する対象
② さまざまなリスクの存在とその対応
③ 開発における基本プロセスと関連標準
また、他者の意見からの気づきや学びを自分の検討に反映や利用することについて、必要性・有効性を理解できるようになること。
授業内容
第01回 オリエンテーション
  (概要,到達基準,講義の進め方)

【目的の必要性】(第2回〜第3回) 到達基準①〜②のベース
どんなにアイデアが優れていても、多くの利用者が求めるニーズに合っていなければ、イノベーションとしての成功はおぼつかない。自分のアイデアを製品やサービスという形にして利用者に広めていくには、製品やサービスを利用者のニーズに合った形にする必要がある。しかしながら、アイデアは利用者のニーズに合った形を満たす一つに過ぎない。利用者のニーズから目的を認識し、それを意識しながらアイデアを利用者のニーズの中心に据えるよう見直すことで、アイデアをより優れたイノベーションにつなげることができるかもしれない。
自分のアイデアはどんな目的を意識しているのかを利用者の立場に立って考える。
第02回 ビジネスにおける標準化の役割と課題
  (ビジネスやビジネス環境の変化と標準化の関係,目的を持つことの重要性について)
第03回 研究目的への努力と標準
  (目標達成における標準の役割について事例紹介)

【提供する価値とその価値を提供する対象】(第4回〜第6回) 到達基準①
アイデアが優れていることをアピールするだけでは,利用者にその良さは届かない。利用者の立場に立ち、目的のもとで利用者が望むことと望まないことを考察し、それを製品やサービスの中に反映する。これらを示せるようにしておくことは、利用者が製品やサービスを理解する助けとなる。
自分のアイデアの目的において、利用者が望むことと望まないことを検討し、製品やサービスに反映すべき事項を明らかにする。
第4回 利用者への意識
(利用者不在の(モノにこだわった)標準化事例と利用者を意識した(共通価値を意識した)標準化事例を紹介)
第5回 まがい物の排除
  (標準を使った認証による製品の品質保証事例を紹介)
第6回 技術の進展と標準
(自動運転、IoT、AI、ブロックチェーン、データ取引、など進展途上にある技術と課題そして標準について考察)

【さまざまなリスクの存在とその対応】(第7回〜第10回) 到達基準②
製品やサービスを提供するにあたり、さまざまなリスクを防御や回避しながら,着実に信用を積み重ねていかなければならない。あらかじめ対応しておけば簡単に回避できるリスクであっても、リスクに出くわしてから対応することは非常にコストと時間がかかる。場合によっては、対応が困難なこともある。それらリスクの出現時期を知るには、製品やサービスを提供するプロセスやサプライチェーンを把握しておく必要がある。
自分が考える製品やサービスを提供するためのプロセスやサプライチェーンを把握し、その中で感がられるリスクを検討し対応方針を考える。
第7回 リスクの種類、安全 〜製品・サービス提供側の安全、顧客側の安全〜
  (安全の基本的な考え方、各種法規制と標準)
第8回 環境、EMC(電磁両立性) 〜製品が正しく動作するために〜
  (法律と標準の関係、法規制の動きと標準)
第9回 サイバーセキュリティ、個人情報保護 〜データをどう守るか〜
  (意図的なリスクへの対応、現状の問題と標準の開発動向)
第10回 原産地,必須特許、コピー商品、紛争鉱物 〜グローバル化の必然〜
  (紛争回避のためのルール、標準)

【開発における基本プロセスと関連標準】(第11回〜第14回) 到達基準③
製品の開発や生産、サービス体制の構築、普及におけるさまざまなプロセスの中で、標準は使われる。これを理解していることは、標準を、開発の効率や普及の効果を高めるのに非常に役立つ。個々の標準は、利便性や効率性などを求めて多くの人が知恵を出し合い合意した取り決めであり、自ら検討する手間が省けるだけでなく、検討不足に陥らずに済む。
標準を使うことは重要であるが、盲目的に使うだけでは効果や効率が限定されてしまう。標準が作られた背景を知ったうえで使うことは、さらに効果や効率を高めるのに重要である。一方で、その背景が標準作成当時と変わっていれば不都合な点も生じる場合がある。そのような点があれば、修正して使う必要がある。もし、背景が全く異なり、既存の標準で対応できなければ、新たに作成して使うことになるだろう。
各自の製品やサービスにおいて、重要であると考える部分に必要な標準について考える。
第11回 設計に必要な標準
  (材料,設計基準,評価試験,およびそれらの利用形態)
第12回 情報伝達に必要な標準
  (用語,記号,文書体系,およびそれらの役割)
第13回 製品の開発プロセスと標準、契約
  (設計,工程開発、生産、サプライチェーン)
第14回 標準化のプロセスと標準の内容構成
  (ISO/IECの標準化プロセス,企業における標準化プロセス例,標準の内容構成)

【全体のとりまとめ】
講義を通じて考えた製品やサービスについて、到達基準①〜③に対する検討結果を発表する。
第15回 全体のまとめ、発表
  (全体のまとめ。全員が自分の研究テーマに関連した標準について発表)

履修条件・関連項目
東京農工大学工学府「産業技術専攻」の「講義科目」(基盤科目)の1つである。
授業時間30時間に加え、配布した講義資料などを参考にし、本学の標準時間数に準ずる予習と復習を行うこと。

テキスト・教科書
Moodleに掲載する講義資料を使う。
参考書
適宜、講義の中で紹介する。
成績評価の方法
レポートの評価と講義への貢献度を総合的に5段階で評価する。
レポートの評価については、到達基準に対する理解度を評価する(70%)。
講義への貢献度は、討議への参加頻度、発言内容などを評価する(30%)。
出席が7割未満の者には成績をつけない。

教員から一言
標準は、ビジネスにおいて重要なツールである。ここで学ぶ内容は、就職活動におけるアピールポイントや仕事における自分の強力な武器となって役立つだろう。
そのためには、講義期間中を通して、下記を意識してもらいたい。
・自分の研究テーマをどのようにしたら世の中で役立つようにできるか(目的、対象)
・獲得した知識をどのように活用したらよいか

キーワード
イノベーション、標準、規格、適合性評価、認証、リスク
オフィスアワー
質問と相談は随時電子メールで受け付ける。
備考1
備考2
参照ホームページ
開講言語
日本語
語学学習科目
更新日付
2022/03/30 9:31:32