科目名[英文名] | |||||
植物工学特論 [Plant Biotechnology] | |||||
区分 | 後期課程科目 | 選択必修 | 単位数 | 2 | |
対象学科等 | 対象年次 | ~ | 開講時期 | 3学期 | |
授業形態 | 3学期 | 時間割番号 | 1080104 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
山田 晃世, 新垣 篤史 [YAMADA Akiyo, ARAKAKI Atsushi] | |||||
所属 | 工学部 | 研究室 | メールアドレス |
概要 |
代謝工学の中で,植物の二次代謝産物は「薬草」として古くから利用されてきており,現在では東洋医学に対する関心の高まりから,その生産が追いつかずに不足しているのが現状である。これを安定供給するためには,遺伝子工学を利用した生産が望まれているが,その代謝系は植物種ごとに異なり非常に多岐にわたっており,未解明のものも多い。一方,網羅的解析技術の進歩により,代謝系に関わる遺伝子の発現,その酵素タンパク質発現,さらには代謝産物の量が一斉解析できる時代が来ている。そこで,このような代謝産物の一斉解析,さらに植物における二次代謝系の理解を目的とする。このために,植物における代謝系を明らかにする研究方法(放射性同位体を用いた研究方法など)の理解から,各種植物二次代謝産物とその合成系について概説し,植物における有用物質生産について学び,その工学的利用を考える。 |
到達基準 |
履修案内のカリキュラムマップを参照してください。 1)植物二次代謝産物の合成系の解析手法を理解する。 2)植物に蓄積されている二次代謝産物網羅的解析手法を理解する。 3)有用な植物二次代謝産物の工業生産方法について理解する。 |
授業内容 |
第1回 植物代謝系の特徴。独立栄養生物としての代謝系の俯瞰。代謝系における動的平衡状態の理解。その断面を切るメタボローム解析の実際(GC-MS, LC-MS, FT-MS を利用した網羅的一斉解析)。 第2回 代謝系の推定。糖代謝を例とした代謝系推定の実際(類似した活性を有する複数の酵素が存在する時,どれがどの代謝系に関わるメンバーであるのかを特定する方法および C6/C1 比の測定による代謝フローとエネルギー・フローの測定と細胞内における物質・エネルギー循環の測定)。トレーサー(放射性同位体)を用いた実験。トレーサー(放射性同位体)の合成と比活性。コールド・トラップ法を用いた代謝系の推定 第3回 植物における窒素代謝。葉緑体の役割は光合成のみではない。獲得した光エネルギーのかなりの部分を使って窒素固定を行っている。非マメ科植物における窒素固定反応の実際(硝酸還元と亜硝酸還元)。獲得した光エネルギーによるイオウの還元。アミノ酸合成以外の窒素化合物の合成(コリン,ベタイン合成。アミン,ポリアミン合成。グルタチオン合成。ヌクレオチド合成。生理活性ポリペプチド。ウレイド合成) 第4回 植物におけるアミノ酸代謝。葉緑体が植物におけるアミノ酸代謝の重要器官であることの理解。アスパラギン酸グループ合成系,グルタミン酸グループ合成系,分岐アミノ酸グループ合成系,セリングループ合成系,芳香族アミノ酸グループ合成系,ヒスチジングループ合成系, 第5回 植物における脂質代謝。グリセロ脂質(中性脂質と極性脂質)。脂肪酸の合成と分解。,原核経路と真核経路の存在とその特徴。植物におけるアミノ酸代謝および脂質代謝の遺伝子組換えによる改変。 第6回 植物における二次代謝産物とその合成系 ― アルカロイド。ピロリジジンアルカロイド,ピペリジンアルカロイド,キノリリジンアルカロイド,チロシンアルカロイド,フェニルアラニンアルカロイド,インドールアルカロイド。各々の基本的な合成系と代表的な化合物について。 第7回 植物における二次代謝産物とその合成系 ― アルカロイド以外の含窒素化合物。青酸(含シアン)配糖体。芥子油(からしゆ)配糖体(グルコシノレート)。非タンパク質性アミノ酸。その他,辛味成分,香辛料成分の構造と合成系と防御物質としての役割の理解。 第8回 植物における二次代謝産物とその合成系 ― テルペノイド。モノテルペン,セスキテルペン,ジテルペン,トリテルペン,テトラテルペン,ポリテルペン。サポニン,ステロール,カロテノイド,クロロフィル,アブシジン酸,ジベレリンの合成。その合成系(イソプレン単位のメバロン酸経路および非メバロン酸経路からの合成)における細胞質経路とプラスチド経路の存在と両者の役割分担。 第9回 植物における二次代謝産物とその合成系 ―フェニルプロパノイド。リグニン,クマリン,フラノクマリン。陸上植物における重力と乾燥に耐える役割の理解。維管束系における役割,紫外線防御と病原菌耐性における役割の理解。 第10回 植物における二次代謝産物とその合成系 ― フラボノイド。カルコン,フラバノン,フラバン,フラボノール,イソフラボン,カテキンの構造とその合成系と酵素遺伝子および遺伝子発現制御機構。防御化合物としての役割と遺伝子発現。 第11回 植物における二次代謝産物とその合成系 ― アントシアニン。ペラルゴニジン,シアニジン,デルフィニジン,ペオニジン,ペチュニジン,マルビジン骨格の基本的色調。配糖化とアシル化という修飾による分子の安定化と色調の変化と多様化の機構。金属錯体説,自己スタッキングおよび他のフラボノイド分子とのスタッキングによる安定化と色調の青色化の機構。 第12回 植物における二次代謝産物とその合成系 ― ベタニジン。中心子目植物に限られた分布とアントシアニン合成系との排他性。ベタシアニンとベタキサンチンの構造とその推定される合成系。反応中間体における配糖化反応とそれを司る酵素とその遺伝子。 第13回 。植物における防御システム。病原菌やウィルスに対する抵抗性と捕食者に対する抵抗性の違いの整理と理解。遺伝子発現を伴わない初期反応と遺伝子発現を伴う後期反応の理解。オキシデーティブ・バーストとイオン・チャネルの役割。全身獲得抵抗性およびジャスモン酸とメチル・ジャスモン酸の役割の理解。 第14回 遺伝子組換え技術を利用して防御系を強化した遺伝子組換え植物の作出。遺伝子発現を伴う防御系の後期反応の強化。ファイトアレキシン合成系の強化。Pathogenesis related protein を利用した抵抗性の強化。抵抗性を強化することによる食品としての農作物の質の低下のジレンマ。食品としての質を向上させることによって抵抗性が低下してしまうことのジレンマ。 第15回 まとめとテスト。 |
履修条件・関連項目 |
生命工学科の学部授業「生命化学 I, II, III」を履修しておくことが必要。授業時間30時間に加え、配布した講義資料や参考書を参照し、本学の標準時間数に準ずる予習と復習を行うこと。 |
テキスト・教科書 |
以下の参考書などからまとめた PowerPoint 資料をもとに開講する。 |
参考書 |
「テイツ・ザイガー 植物生理学(第3版)」(培風館),「植物色素研究法」(植物色素研究会編)(大阪公立大学共同出版会) |
成績評価の方法 |
評価として授業で解説した代謝系の1つについての最新の論文等をまとめたものをレポートとすることを課す。 |
教員から一言 |
植物は環境からのストレスや捕食者,病原菌に対して抵抗するためのシステムを進化の上で獲得してきた。その中でも二次代謝系が重要な役割を果たしている。現在でもその抵抗性が生存のために有利に働いているものもあるが,すでに捕食者がいなくなったなどのために不必要となった合成系が,「痕跡代謝系」として残っている。これらが薬などとして利用されている。その代謝系のバラエティーとその工学的利用を理解してもらいたい。 |
キーワード |
二次代謝系、植物有用物質生産、植物色素、アミノ酸合成 |
オフィスアワー |
毎週火曜日午後1時から2時まで、場所:工学部12号館408号室 |
備考1 |
備考2 |
参照ホームページ |
開講言語 |
日本語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2022/02/02 18:47:39 |