科目名[英文名] | |||||
地域生態システム学Ⅱ [Ecoregion Science II] | |||||
区分 | 専門科目 | 選択必修 | 単位数 | 2 | |
対象学科等 | 対象年次 | 3~4 | 開講時期 | 後学期 | |
授業形態 | 後学期 | 時間割番号 | 02b3259 | ||
責任教員 [ローマ字表記] | |||||
仲井 まどか [NAKAI Madoka] | |||||
所属 | 農学部附属硬蛋白質利用研究施設 | 研究室 | 4号館241 | メールアドレス |
概要 |
本講義のGoogleClassroomにおけるクラスコードは jsvu4dg です。 (クラスルーム名「放射線化学2023」) 授業の案内・指示、資料の配布、レポート等の提出もこのClassroomを通じて行いますので履修希望者は履修申告とともにこのClassroomへの登録をお願いします。 かつては、全ての手を尽くしたガン患者に対する偶然の僥倖にしか期待できない対処法とされてきた放射線医療であったが、現在では末期ガン患者でさえ高い割合で治癒できる粒子線医療技術が確立されている。そこには放射線という量子効果の詳細な理解があり、放射線利用・計測技術の格段の進展がある。量子力学と化学反応論により放射線効果を予測し管理・制御する綿密な理論シミュレーション技術を用いた治療設計に基づいており、日夜、その改訂・刷新が行われている。患者の治癒後のQuality of Lifeの観点から、病変臓器全体を切除するのでなく局所的な病変組織のみを除去する放射線治療が、治療の再初期段階から治療法の中心に据えられることも現実的になりつつある。 医療だけに限らずとも、放射線の利用が工学技術、産業技術の各所において試みられ、大きな成功を見た。現在の技術において放射線はなくてはならないものになりつつある。放射線はいわば、巨大なエネルギーを持つ微小な弾丸である。したがって物質内の透過性が高く、物質内部にエネルギーを与えるという他の粒子には望めない利点を持つとともに、物質側の特性を利用することにより、その微小な弾丸の大きさを制御することもできる。一方、その巨大なエネルギーの制御を誤れば、物質を破壊し人体を被ばくさせる諸刃の剣である。 以上から、放射線の特質についての基本的な内容を理解し、正しく、かつ、直感的なイメージをつかむことは物質合成・変換、医療・診断技術などに携わる技術者にとって必要不可欠な素養であり、これらの概念を身に着けることを目標とする。 本講義のカリキュラム上の位置づけは、低学年次に履修した物理学的諸現象を単元的な科学・技術から総合する能力の涵養である。 |
到達基準 |
(1)放射線とは何か理解でき,エネルギーや線質に特徴的な放射線効果を説明できるようになること。 (2)気相、凝縮相、生体などへの放射線効果を定性的に説明できるようになること。 (3)放射線化学の研究法の概要と特徴を説明できるようになること。 (4)放射線化学の応用についての概念を理解できるようになること。 なお、本講義の生体医用システム工学科における意義を理解していただくために、履修案内のカリキュラムマップも参照して下さい。 |
授業内容 |
1回 放射線を用いた医療・診断技術の基礎としての放射線効果 2回 放射線化学と放射化学:放射線はどこからくるのか 3回 放射線は何を引き起こすのか:構造破壊とラジカル反応の基礎 4回 分子の構造と分解 5回 原子の構造:一電子原子の量子力学 6回 原子の構造:二電子原子、多電子原子、電子スピン 7回 物質中に入射した放射線の減速:デルタ線、コンプトン効果、オージェ効果 8回 物質中に入射した放射線の減速:散乱とポテンシャル 9回 物質中に入射した放射線の減速:衝突断面積 10回 物質中に入射した放射線の減速:連続減速過程とそのシミュレーション 11回 物質中に入射した放射線の運命:水和電子、再結合、電子付着 12回 放射線効果に関する物理的・化学的内容の概観 13回 放射線の発生方法 14回 放射線検出と放射線量測定の方法1 15回 放射線検出と放射線量測定の方法2 |
履修条件・関連項目 |
量子力学および低学年次の物理学を習得していることが望ましい。必要に応じてこれらの復習を交えて講義を行う。 なお、履修にあたり本学の標準時間数に準ずる予習と復習を行うことが必要です。 |
テキスト・教科書 |
特に指定しない。 |
参考書 |
「放射線化学のすすめ」, 日本放射線化学会編(学会出版センター, 2006). "Fundamentals of Radiation Chemistry", A.Mozumder (Academic Press, 1999). "Charged Particles and Photon Interactions with Matter", eds. Y.Hatano et al (Marcel Dekker, 2004), (CRC Press, 2011).. 「原子核・放射線の基礎」, 真田順平(共立全書No.163), (共立出版1966、凄く古い名著) 「放射線障害の機構」, 山本修(編)(学会出版センター1982) 「分子放射線生物学」, 近藤宗平(学会出版センター1972) 「放射線応用計測」, 野口正安, 富永洋(日刊工業新聞社2004) 現代的測定法のモノグラフは「日本分光学会測定法シリーズ」(学会出版センター)に多数 その他、 放射線初期過程で最も重要なのは原子の量子力学と化学反応論である。 "Physics of Atoms and Molecules", B.H.Bransden & C.J.Joachain, (Prentice Hall 2003)に必要最小限のことはすべて出ている。 「電子・原子・分子の衝突」, 高柳和夫(培風館1996)放射線化学に関連する散乱の量子力学の名著 「分子反応動力学」, R.D.レヴィン(訳: 鈴木, 染田)(シュプリンガージャパン2009)化学反応の物理化学 |
成績評価の方法 |
【一番大事なこと】将来の仕事場が履修科目の成績評価します(その方法は、下記、教員からの一言をご覧ください)。 【本授業の成績評価】授業中の提出物(毎回、複数回のクイズ。時々、項目に関するレポート)の解答状況と期末試験(レポート)の成績で評価します。得点比は概ね1:2です。 |
教員から一言 |
当科目に限らず、皆さんの将来の仕事場が履修科目の成績評価をします。就職時に提出する成績証明書に放射線化学「合格」の記述があれば、専門的基礎知識を持つ者として仕事の担当が任されます。その仕事の出来具合で成績評価されます。これが大学修了の意味です。職場(特に営利企業)の仕事にかかる多額の予算を回収できない成果はD評価です。大学とは違い、このD評価には再履修の機会はありません。このような世界が皆さんを「期待して」待っており、その世界には、入ることより、留まり続けることの方が大変ですが、そのような社会生活はすでに学生時代に始まっています。 放射線化学には広範な工学的応用があり、生体医用システム工学に限ってもさまざまな医療・診断の開発に携わるうえで放射線化学の専門的基礎知識はきわめて有効です。知らないことはメリットになりません。だったらやるしかない。受講を強く勧めます。 でも恐れることはありません。「学ぶ」ことには、平均的国民に比較して、皆さんは突出した高い能力を持っています(だから農工大に合格したのです)。「学びの生活」を継続し、その能力を維持し続ける努力を惜しまなければ、皆さんが社会からの高い合格点をもらうことが困難でないことは先輩方の活躍を見れば明らかです。そして「学び」に終着点はありません。 専門的基礎知識とはなにか、任された仕事について「あれ、どこかで聞いたことがある。そうだ!放射線化学の講義で聞いたのだった。」とノートの該当ページを開けることができるかどうかです。授業は概論でしかなくても、そのページには関連する参考書や専門用語が並んでいます。これらを糸口にすればより広範な知識や考え方を深く学んでいくことができる、そんな入り口のことです。 厳しい試験のためでなく、皆さんが専門的基礎知識を頭のどこかに印象付けることのできるような授業を心がけたいと思います。成績評価もその考えにしたがって行います。 まず、講義をしっかり聞いてください。 |
キーワード |
電離放射線、放射線効果、放射線初期過程、放射線計測 |
オフィスアワー |
メール等でコンタクトし、面談日を相談してください。 |
備考1 |
備考2 |
参照ホームページ |
開講言語 |
日本語 |
語学学習科目 |
更新日付 |
2023/04/06 15:13:29 |